練習から帰ってきた子が、ぽつりと「今日、ペア組む人いなかった」と言う。試合を見に行くと、うちの子にだけパスが回っていない気がする。はっきり言われたわけではないけれど、胸がざわざわする。そんな保護者の方に向けて書きます。
僕は札幌の3拠点(真駒内・南3条・新琴似)で、100名の子どもたちを見ているバスケットボールスクールのコーチです。バスケ歴は27年になります。
先に僕の見方を言うと、ミニバスの仲間はずれは、子どもの性格や相性の問題として語られがちですが、その前に「大人がどう組ませているか」で起きている部分がかなり大きいと感じています。だから僕は、練習の中でそこを自分の仕事だと思って手を入れています。今日は実際にやっていることと、家で見分けるポイントを書きます。
「ペアになって」の一言で、余る子は決まってしまう
ハンドリングや1対1の練習は、ペアでやることが多いです。ここでコーチが「はい、ペアになって」とだけ言って子どもに任せると、何が起きるか。仲のいい子同士が一瞬で組んで、残った子が余ります。そして次の週も、その次の週も、余るのは同じ子になります。
誰かが意地悪をしたわけではありません。でも、本人からすると「毎回自分だけ余る」という経験が積み重なる。仲間はずれの入口は、こういう小さなところにあると僕は思っています。
だから僕は、練習の中で何度も「ペア変えて」と言います。多い日は、1回の練習で4回も5回も言っています。「1回ペア変えるか。ペア変えて。ペア誰でもいいや。ペアやってない人で」。別の日には「そこ、いつも一緒になっちゃうから変えて」と、組み合わせを僕の側で崩しています。
余った子が出た時も、「じゃあそこ3人でやろう」で終わりです。3人でもできるメニューにしておけば、余ることが「失敗」にならない。最後の4対4のチーム分けも、子どもに選ばせずに背の順に並ばせて、僕が番号で割っています。
つまり、仲間を選ぶ場面を子どもに渡さない。これが、僕が仲間はずれに対して一番やっていることです。
練習の最初に、毎回言っている4つの言葉
もう一つ、仕組みとは別に、言葉でも伝えていることがあります。
スクールでは練習の最初に、大事にしている4つの言葉を子どもたちに言ってもらいます。プレイハード、プレイスマート、プレイトゥギャザー、ハブファン。一生懸命やろう、考えてやろう、仲間と一緒に協力してやろう、楽しんでやろう。この4つは、僕が大学時代の恩師から教わったもので、今もそのまま使っています。
体験の子が来た日は、特にこれを丁寧にやります。先日も体験が2人来た日に「仲間と一緒に協力してやりましょう。あとミスしてもオッケーだから、たくさんいいミスをして上手くなっていきましょう」と話してから始めました。
「仲間と協力」と「ミスしてもOK」を並べて言っているのには、理由があります。仲間はずれの多くは、「あいつ、ミスするからパス出したくない」から始まるからです。ミスが責められる空気のチームでは、ミスをする子が自然と外されていく。逆に、ミスが許されている場所では、下手な子にもボールが回ります。ミスを許すことと、仲間を外さないことは、同じ根っこだと僕は思っています。
恩師はよく「お互いを助け合う気持ちがなければ、ディフェンスのヘルプが遅れて失点につながる」と言っていました。仲間を思いやるというのは、道徳の話ではなく、バスケの勝ち負けに直結する技術の話でもあるんです。コーンを守る練習でも、僕は「周りの人みんなで協力して」「3人で連携して」と、一人で守らせない声のかけ方をしています。
家で聞くなら「今日、誰とペア組んだ?」
では、保護者の立場で何を見るか。僕が親御さんにおすすめしているのは、「仲間はずれにされてない?」と聞くより、「今日、誰とペア組んだ?」と聞くことです。
毎回違う名前が出てくるなら、コーチが組み合わせを回しているということ。いつも同じ名前なら、固定されている。「余った」「一人でやった」が何週も続くなら、それは子どもの性格ではなく、組み方の仕組みの問題です。
「パスが来ない」と言う場合は、少し分けて考えています。仲間はずれではなく、単にボールをもらいに行く動きがまだ身についていないことも多いからです。止まって待っている子には、仲のいいチームでもパスは出しにくい。この場合は、人間関係よりも「もらいに行く動き」の練習で変わります。そのあたりは消極的でパスがもらえない子の記事に詳しく書きました。
一方で、「わざと無視された」「名前を呼ばれなかった」と本人が言う時は、僕はまずその感じ方を否定しないようにしています。「気のせいじゃない?」は、子どもからすると「話しても無駄だ」になりやすい。「そうだったんだ。それは嫌だったね」と受け取ってから、いつ、どの場面で、を一緒にたどる。事実と気持ちを分けて聞ける材料がそろうと、コーチに伝える時にも話が早くなります。
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コーチに聞くなら、この一つだけ
心配が続く時、コーチに相談していいのか迷う方は多いと思います。僕はコーチの側なので言いますが、聞いてもらったほうがありがたいです。ただ、聞き方で受け取られ方は変わります。
「うちの子、仲間はずれにされていませんか」と聞かれると、コーチは身構えます。見ていない場面を断定できないし、他の子を悪く言うこともできないからです。代わりに僕がすすめているのは、「練習のペアやチーム分けは、どんなふうに決めていますか」という聞き方です。
これは誰も責めていない質問です。でも、答えでそのチームの環境はかなり見えます。「子どもたちに任せています」なのか、「こちらで回しています」なのか。前者だったとしても、聞かれたことで初めて気づくコーチもいます。コーチは全員を見ているつもりでも、見えていない場面は必ずあります。
それでも変わらない、あるいは子どもが「行きたくない」と言い始めた時は、環境そのものを考える段階かもしれません。その判断については、コーチと合わない時の記事と辞める時の伝え方の記事に書いています。
よくある質問
Q. 子どもは「仲間はずれにされてる」と言うのに、見に行くと普通に見えます。
A. どちらもありえると思います。子どもが強く感じている場面は、大人が見ていない移動中や待ち時間に起きていることが多いからです。僕なら、見た印象で打ち消さずに、「いつ、どの場面で」を何回かに分けて聞きます。同じ場面が繰り返し出てくるなら、それは本人の思い込みではなく、実際に起きていることとして扱います。
Q. 相手の子に、親から直接注意してもいいでしょうか。
A. 僕は、大人同士で話すほうをすすめています。親が他の子に直接言うと、その子の親との関係がこじれて、結果的に自分の子が一番やりにくくなることが多いからです。コーチに事実を伝えて、練習の中で組み方や声かけを変えてもらう。そのほうが、子ども同士の関係は自然に動きます。
Q. ただの仲間はずれと、いじめの線引きはどこですか。
A. 僕はコーチであって専門家ではないので、線引きを断定することはできません。ただ、本人が「行きたくない」と言い続ける、体調に出る、バスケ以外の場面でも元気がない、といった様子があれば、チーム内で解決しようとせず、学校の先生や専門の相談窓口も含めて、早めに大人を増やしたほうがいいと思っています。
まとめ
ミニバスの仲間はずれは、「うちの子が大人しいから」「気が強い子がいるから」と、子どもの性格で説明されがちです。でも僕は、現場に立っていて、そうは思っていません。
余る子が出ない組み方、ミスをしても外されない空気、仲間を選ぶ場面を子どもに渡さない進め方。仲間がいるかどうかは、性格より先に、大人が作る仕組みで決まります。そして仕組みは、変えられます。
子どもが練習から帰ってきて、聞かなくても「今日は〇〇と組んだ」と名前を言ってくる。その日が来たら、その場所は、その子の居場所になっていると思っていいんじゃないでしょうか。僕は、そういう居場所を作ることまでが、コーチの仕事だと思っています。
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