練習ではできているのに、試合になるとボールに絡めない。コートにはいるけれど、どこか遠慮して見える。「うちの子、消極的で……」という相談は、ミニバス世代の保護者の方から本当によく受けます。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。今日は、「消極的」という言葉で片づける前に見てほしいことを、スクールでの実話から書きます。
「パスがもらえませんでした」と、その子は言った
スクールの練習で、試合の動画を見ながら子どもたちにフィードバックをしていた時のことです。ある子が、ぽつりと言いました。「試合で、なかなかパスがもらえませんでした」。
その気持ちは、よく分かります。でも、動画を一緒に見返してみると、少し違って見えてきました。パスが「もらえなかった」というより、パスを「もらいに行けていなかった」んです。
コートを見ていると、はっきり分かることがあります。ボールは、立って待っている子のところには、なかなか来ない。来るのは、動いて、呼んでいる子のところです。パスを出す側になって考えると当たり前なんですよね。止まっている味方より、いい場所に動いて「こっち!」と手を出している味方の方が、圧倒的に出しやすい。
つまり、「消極的だからボールに絡めない」のではなく、「ボールへの関わり方をまだ知らないから、消極的に見える」ことが、実はすごく多いんです。性格の問題ではなく、方法の問題。ここの見立てを間違えると、かける言葉も間違えてしまいます。
「もらいに行く」は、たった三つ
じゃあ、もらいに行くって具体的に何なのか。僕は三つだと思っています。
一つ目、いい場所に動く。ディフェンスの間の、パスが通るスペースへ自分から入っていく。二つ目、合図を出す。手を挙げる、「こっち!」と声を出す。出し手に「ここにいるよ」と伝える。三つ目、一回ダメでも、もう一度動く。一度もらえなくても、また別の場所へ動き直す。
派手なドリブルより、この「もらいに行く動き」ができる子が、試合でどんどんボールに絡んでいきます。
ただ、ここからが難しいところで、ミニバス世代には二つの癖が出やすいんです。一つは、待ってしまうこと。「ボールは来るもの」だと思って、その場で待つ。もう一つは、逆に味方に近づいていってしまうこと。ボールがほしくて、みんなが同じところへ寄って、団子状態になる。
どちらも根っこは同じで、スペースが取れていない。もらいに行くというのは、味方に近づいて固まることじゃなく、むしろ逆で、味方から離れて空いている場所へ動くことなんです。ここが分かってくると、同じ実力でも、触るボールの数がまるで変わってきます。
家でできるのは、技術指導より「後押し」
「もらいに行く動きが大事」と頭で分かっても、試合で急にできるようにはなりません。だから僕がスクールでも家でも、よくかけているのは、「自分から、もらいに行っていいんだよ」「どんどん呼んでいい」という言葉です。
遠慮がちな子は、「自分なんかがボールを呼んでいいのか」と、どこかで思っています。だから、「行っていい」「呼んでいい」という許可を、近くの大人が繰り返し出してあげる。これだけで動きが変わる子を、僕は何人も見てきました。
忘れられない子がいます。チームではキャプテンを任されていたのに、重圧とミスの怖さでバスケを楽しめなくなって、プレーがどんどん小さくなっていた子です。うちの体験に来た時、僕がやったことは特別な技術指導ではありません。挑戦した動きを、結果に関係なく拾って言葉にしただけです。
「今の動き出し、良かったよ」「いいところに走ってた」。一回のレッスンの終わりには、その子は自分からボールを呼ぶようになっていました。もともと積極性がなかったんじゃない。積極的になっていい場所が、なかっただけなんです。
そして試合のあと。僕が聞くようにしているのは、「何点取った?」でも「パスもらえた?」でもなく、「今日、こっちって呼べた?」です。呼べたなら、それでいい。「呼べたんだ、いいね」と返す。もらえたかどうかは、その次でいいんです。結果はまだ出なくても、自分から動いて声を出せたこと。そこを見つけて言葉にしてあげると、その行動がだんだん、その子の当たり前になっていきます。
よくある質問
Q. もともと内気な性格です。性格は変えられないのでは?
A. 性格を変える必要はないと思っています。おとなしい子でも、「空いた場所に動く」「手を挙げる」はできます。実際、普段は無口なのに、コートでは静かにいい場所へ動き続ける子がいます。目指すのは「元気で積極的な子」ではなく、「自分から関われる子」。入り口は性格ではなく、行動です。
Q. コーチに「積極性が足りない」と言われました。家でどうすれば?
A. 「積極的に行け」とそのまま伝えても、子どもはどう動けばいいか分かりません。僕なら、「次の試合、こっちって一回呼んでみよう」と、行動を一つに絞って渡します。抽象的な注文を、実行できるサイズに翻訳してあげるのが、家庭でできるいちばんの助けだと思います。
Q. ミスが怖くて消極的になっているようにも見えます。
A. その場合は、順番が逆になります。動き方を教える前に、ミスした時に責められない安心が先です。試合後の会話で、ミスより先に挑戦した事実を拾ってあげてください。「あそこで呼んだの、見てたよ」。安心と方法、両方そろって、子どもは自分から動き始めます。
まとめ
「パスがもらえない」と言った子に、「もっと動け」と返すのは簡単です。でも、その一言だけだと、子どもはどう動いていいか分かりません。
ボールは、待つものでも、近づくものでもなく、空いた場所へもらいに行くもの。それを知って、「行っていいんだよ」と背中を押してもらった子は、見違えるようにボールに絡み始めます。消極的に見える姿は、その子の性格の結論ではなく、まだ方法と許可が届いていないだけ。僕はそう思って、今日も「いいよ、呼んで」と声をかけています。
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