6年生になって、プレーが止まって見える。5年生の頃は相手を抜けていたのに、最近は同じところで止められる。試合を見に行くたびに「最後の年なのに」と焦ってしまう。そんな保護者の方に向けて書きます。
僕は札幌の3拠点(真駒内・南3条・新琴似)で、100名の子どもたちを見ているバスケットボールスクールのコーチです。バスケ歴は27年。会社員を13年やってから独立しました。
先に僕の見方を言うと、6年生の伸び悩みの多くは、成長が止まったのではなく、今まで通じていた武器が相手に読まれ始めた合図です。つまり「次の一手を足す順番が来た」ということ。ここからは、なぜ6年生でそれが起きやすいのか、足す一手は何か、そして「最後の年だから」という焦りがその一手の邪魔をしてしまう理由を書きます。
5年生まで通じた武器が、6年生で読まれ始める
低学年から5年生くらいまでは、足が速い、体が大きい、ドリブルが少し上手い。そのどれか一つがあれば試合に出られて、点も取れます。本人もそれで勝ってきたので、その形を繰り返す。当然です。うまくいっている形を、わざわざ変える理由がありません。
ところが6年生になると、周りの子の体が追いつき、相手チームもその子の得意な形を覚えます。右に行くと分かっていれば、右を切られる。スピード一本なら、下がって待たれる。本人は去年と同じことを同じ強さでやっているのに、結果だけが出なくなる。親の席から見える「伸び悩み」の正体がこれであることは、僕の経験ではかなり多いです。
だから僕は、この時期の子に「下手になった」とは言いません。むしろ、相手に研究されるくらいの武器を一つ持てた、ということです。問題は武器が錆びたことではなく、武器が一つしかないこと。なお、上達そのものがゆっくりに見える場合は少し別の話なので、バスケの上達が遅い子は、3ヶ月で気持ち、半年でプレーが変わるに分けて書いています。
足す一手は、派手な技ではない
じゃあ何を足すのか。新しいドリブル技を覚えさせたくなりますが、僕がスクールで先に足してもらうのは、もっと地味なものです。
一つは「もらいに行く動き」。ボールは、立って待っている子のところにはなかなか来ません。来るのは、空いた場所に動いて「こっち」と手を出している子のところです。同じくらいの実力でも、もらいに行く子と待っている子とでは、触るボールの数がまるで変わります。
もう一つは「仕掛けの最初の一歩」。得意な右に行く前に、左に一歩だけ出す。それだけで、右を切っていた相手の足が止まります。技の数を増やすのではなく、持っている武器の前に一歩を足す。
スクールで実際にあった話をします。最初は全然攻められなくて、ボールを持ってもすぐパスを出していた子がいました。何ヶ月か経って、その子が自分からボールを呼んで、パスをもらって、そのままゴールにアタックした。僕はその場面を見て、正直、点が入ったかどうかより、その一歩の方がずっと大きいと思いました。そこまで行けたら、次のステップに移れるからです。
ただし、新しい一手は、最初は必ず下手になります。慣れない左の一歩でボールを失う。もらいに行ったのにパスが来ない。得意な形をやめた分、一時的に数字は落ちます。ここが、6年生にとって一番きつい。
「最後の年だから」が、伸び悩みを固定する
6年生には、「ミニバスは今年で最後」という時計が乗っています。親も本人も、残りの試合を数え始める。すると何が起きるかというと、新しい一手を試して失敗する余裕がなくなり、子どもは得意な形に戻ります。得意な形は読まれているので結果は出ない。でも新しいことを試すのはもっと怖い。こうして伸び悩みがそのまま固まってしまう。
僕自身も、シュートが入らない時期に、結果だけを見て打つのが怖くなった経験があります。そこから抜けられたのは、入ったか外れたかではなく、「いい体勢で打てたか」「いい選択だったか」という中身を見るようにしてからでした。結果が出ない時間を一度通ると、次に同じ時期が来ても慌てなくなります。
だから僕は、6年生の子には試合のあと「今日は何を試した?」と聞くようにしています。点が入ったかではなく、左に一歩出せたか、一回もらいに行けたか。それを数えてあげる。家でも同じ聞き方ができると、子どもはもう一回試す勇気が持てます。僕が現場や家で使っている声かけを30個まとめたチェックリストをLINEで無料で配っていますので、言葉に迷った時の引き出しにしてもらえたらと思います。
週1回のスクールだけでは変わらない、と僕は子どもに言っている
もう一つ、正直に書いておきます。僕はスクールの子たちに「ここだけでは絶対うまくならないよ」とはっきり言っています。バスケットは習慣のスポーツで、反復の中でしか身につきません。週1回のスクールで新しい一歩を知っても、自分のチームの練習や試合でそれを出さなければ、練習のための練習で終わってしまう。
だから足した一手は、チームに戻った時に「今日はこれを意識する」と決めて使ってほしい。たまにバスケットノートを書いてもらうのはそのためで、「今日は姿勢を低くしようとしているな」と見て分かる子は、本当に変わっていきます。
家でできることがあるとすれば、練習を増やすことではないと僕は思っています。帰ってきた子が「今日は左に行ってみた」と言った時に、結果を聞く前に「それ、いいね」と返す。6年生の伸び悩みは、技術だけでは抜けられません。試して失敗してもいい空気が家にあるかどうかで、一手を足せるかが決まります。
よくある質問
Q. 残り半年で、結果に出ますか?
A. 正直に言うと、ミニバスの最後の大会に間に合うかどうかは約束できません。ただ、足した一手は中学に持って行けます。ミニバスで上手かった子がその後のカテゴリーに残っていない例を僕はたくさん見てきましたが、6年生で一つ足した子が中学で伸びていく姿も同じくらい見てきました。物差しを「最後の大会」から「中学の最初の試合」に少しずらしてみてください。
Q. 本人が「もう伸びない」「向いてない」と言います。
A. 伸び悩みの時期に出やすい言葉です。僕はまず「どのプレーで止められてる?」と具体に下ろします。「全部」ではなく「右のドライブ」まで絞れると、足す一手が見えて、気持ちが少し戻ります。やめたい気持ちが本気で強い場合は、ミニバスを辞めたいと言われた時の伝え方に分けて書いています。
Q. 周りの子は個人レッスンやクラブに行っています。うちも増やすべきですか?
A. 量を増やす前に、今の練習で「新しい一手を試せているか」を見てほしいです。試す場所がないまま量を増やしても、得意な形の反復が増えるだけになりがちです。増やすなら、失敗しても怒られずに試せる場所を一つ、が僕の答えです。
まとめ
6年生の伸び悩みは、止まったのではなく、武器が読まれ始めた合図です。足すのは派手な技ではなく、もらいに行く動きと、仕掛けの最初の一歩。それは最初は下手になるので、「最後の年だから」と結果を急ぐほど、子どもは得意な形に戻って伸び悩みが固まります。
僕は「今日は何を試した?」と聞いて、一歩を数えるようにしています。6年生の3月はゴールではなく、中学に持っていく一つを決める年だと思っています。
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