練習から帰ってきた子が、膝をさすりながら「ちょっと痛い」と言う。熱があるわけでも、転んだわけでもない。検索すると「成長痛」「オスグッド」という言葉が出てきて、休ませたほうがいいのか、様子を見ていいのか、よけいに分からなくなる。そんな夜を過ごしている保護者の方が、きっといると思います。
僕は札幌の3拠点(真駒内・南3条・新琴似)で、100名の子どもたちを見ているバスケットボールスクールのコーチです。バスケ歴は27年。会社員を13年やってから独立しました。
先に正直に書いておくと、その痛みが成長痛なのか、何日休めばいいのかは、僕には判断できません。それは医療機関の仕事で、僕が口を出す場所ではないと思っています。ただ、膝が痛いと言った子を目の前にして、僕が練習で何をしているかは書けます。今日はその話です。
練習のあとに「膝が痛い」と言った子と、僕が話したこと
春の低学年クラスの練習が終わったあと、一人の子が膝を押さえていました。
「今、痛いの?」と聞くと、「少し」。「どういう痛さ?」と聞くと、少し考えてから「ズキズキする。内側が」。それから「最近、身長伸びた?」と聞くと、「伸びた気がする」と言うので、「じゃあ、ちょうど成長期だね」と返しました。
僕がこの時に一番やりたかったのは、痛みに名前をつけることではありません。「痛い」という一語を、もう少し細かい言葉にしてもらうことです。
子どもの「痛い」は、たいてい一語です。でも、ズキズキなのか、ピリッとなのか。動いた時だけなのか、じっとしていても痛いのか。膝のお皿の下なのか、内側なのか。ここまで言葉になると、本人も自分の体のことが少し分かるし、保護者の方が病院で説明する時にも、そのまま使えます。
診断はできない。でも「どんな痛さ?」と聞いて、一緒に言葉にすることはできる。僕がスクールでやっているのは、まずそこです。
休むか続けるかの二択にしない
その子に僕が最後に言ったのは、「ちょっと無理しないでね。膝は怖いから」でした。
スクールでは、膝や足首が痛いと言った子を、その日はジャンプと体がぶつかる練習から外しています。ただ、帰ってもらうわけではありません。練習の中に、動かない練習があるからです。
これは僕が自分の怪我で動けなかった時に、強く思ったことでもあります。練習には来ているけれど、思い切り動けない。そういう子に対して、大人が「今日はプレーできないから意味がない」と見るのか、「今日は何を見られるか」と見るのか。ここで子どもの一日はまるで変わります。
動かない練習の中身は、たとえばこんなものです。
仲間のリバウンドの本数を数える
仲間の良かった声かけをメモする
コーチが言ったことを、自分の言葉でノートに残す
プレーしていない時間にも、選手として伸びる余白はあります。痛みがある日に「休むか、続けるか」の二択しかないと、子どもは痛みを隠して続けるほうを選びがちです。「今日は見る日」という三つ目の選択肢があると、痛いと言いやすくなります。
ちなみに、練習の量そのものがきつくて休みたい、という話は少し別の問題なので、練習が厳しすぎる時の記事に分けて書いています。
「痛くない方の足もケアして」と伝えた理由
さっきの子に、僕はもう一つ伝えました。「痛くない方の足も、ちゃんとケアしてね」。
膝が痛い時、痛い膝だけを見がちです。でも膝周りだけでなく、ふくらはぎ、太もも、腰、背中まで、体は全部つながっています。どこかが悪いと、別のどこかが悪くなる。そして痛い方をかばって動いているうちに、痛くない方に負担がたまります。
これは僕自身の失敗からきています。25歳の時、僕は左のアキレス腱が痛いのを我慢して動き続けて、かばっていた右のアキレス腱を切りました。痛くない方の足のほうが、本当は危なかったんです。だから子どもには、左右のバランスをとることを、自分の話と一緒に伝えています。
スクールの低学年クラスでは、成長期向けのストレッチを練習の日課にしています。膝周り、ふくらはぎ、太もも、腰、背中を左右バランスよく。痛みがある日は、その子だけ負荷を軽くします。もう一つ、アップに時間をかけること。筋肉が冷たいまま急に動くのが一番危ないと僕は思っていて、派手さはないですが、ここを面倒くさがらないようにしています。
ストレッチで痛みが治る、とは言えません。僕が言えるのは、「痛い方だけ見ない」「体は全部つながっている」ということを、子どもが自分の言葉で分かっているかどうかで、その後の動き方が変わる、ということです。
家での声かけについては、僕が普段スクールで使っている言葉をLINEで「声かけチェックリスト30」として無料で配っています。痛みの話も、この中の「まず聞く」という形に含まれています。
「休むと遅れる」という焦りに、僕が返していること
膝が痛い子を休ませる時、一番つらいのは痛みより焦りかもしれません。周りはみんな練習している。自分だけ横で見ている。保護者の方にも、「ここで休んだら、せっかく上手くなってきたのに」という気持ちが出てくると思います。
僕が自分の体に対してやっているのは、昔の自分や周りの子と比べずに、昨日の自分と比べることです。昨日より少しでも良くなっていれば、それでいい。これは大人になって体づくりをやり直した時に、焦って無理をしないために一番効いた考え方でした。
子どもにも同じことを言っています。長く続けている人は、速く仕上げた人ではなく、「ちょっと痛いな」で引ける人です。目先の一週間より、この先の十年。成長期の体はデリケートで、「痛い」のサインを見逃さないことが、長くバスケを好きでいてもらうための近道だと僕は思っています。
よくある質問
Q. 成長痛やオスグッドと言われたら、バスケは休ませるべきでしょうか?
A. 休む期間や練習の可否は、僕には判断できません。痛みが何日も続く時、腫れている時、歩き方が変わっている時は、まず整形外科などの医療機関で診てもらうのが安心です。僕が家でできると思うのは、受診の前に「いつ・どこが・どんな痛さか」を子どもと一緒に言葉にしておくことです。
Q. 休んでいる間、他の子に遅れをとりませんか?
A. 僕は、怪我から戻って活躍する子は、動けない期間に何か一つ積み重ねていた子だと思っています。練習を見て数える、ノートに残す、痛くない部分のケアをする。この時間を「ゼロの時間」にしないことを、一緒に決めてあげてください。
Q. 痛くても言わない子には、どうすればいいですか?
A. 痛いと言ったら練習から外される、と思っている子は、言いません。「言ってくれてよかった」が先にある場所を作ることから始めています。この話は怪我が怖い小学生の記事に詳しく書きました。
まとめ
練習のあとに「膝が痛い」と言う子に、僕がやっていることはこの順番です。
診断はしない。代わりに「どんな痛さ?」と聞いて、一緒に言葉にする
休むか続けるかの二択にせず、「今日は見る日」を用意する
痛い方だけでなく、痛くない方の足もケアする。体は全部つながっている
周りと比べず、昨日の自分と比べる。「ちょっと痛いな」で引けることを褒める
僕が子どもたちに最後に残したいのは、自分の体のことを、自分の言葉で言える力です。「膝の内側が、動くとズキズキする」と自分で言える子は、中学に上がっても、大人になっても、自分で自分を守れます。膝の痛みは、その練習を始めるきっかけにもなります。
家で使える声かけの型は、LINEの「声かけチェックリスト30」にまとめています。よかったら受け取ってください。