バスケの上達が遅い。試合を見に行っても、同じ学年の子はどんどん上手くなっているように見えるのに、うちの子のプレーは前と変わっていない気がする。先に僕の答えを言うと、多くの子は3ヶ月続けてようやく気持ちの変化が見え、半年でプレーに現れます。上達が遅く見える時期は、多くの場合、成長が止まっている時期ではなく、成長が目に見える形になる前の時期です。
もう一つ、「今の上手さの順位」と「最終的にどこまで行くか」の相関は、親が思っているよりずっと弱い。ミニバスで上手かった子がその後のカテゴリーに残っていないケースを、僕は本当にたくさん見てきました。小4や小5から始めて周りより遅れて見える、という場合も、見る物差しは同じです。何歳から始めるかの話は、バスケは何歳から?年長でも小5でも遅くないに分けて書いています。
以前、ある保護者の方が面談で「試合を見て、切なくなってしまって。成長してないんじゃないかって」と話してくれたことがあります。責めているのではなく、本気で見ているから苦しい。この記事では、親に見える成長とコーチに見える成長のズレ、変化が表に出るまでの時間差、そして隣の子ではなく過去のその子と比べる物差しを、札幌で100名を指導している立場から正直に書きます。
親に見える成長と、コーチに見える成長はズレている
まず知っておいてほしいのは、親の席から見える成長と、コーチがコートで見ている成長は、種類が違うということです。
親の席から見えるのは、得点、ドリブルで抜けたか、シュートが入ったか。つまり結果です。一方で僕らが見ているのは、空いたスペースに走り込めたか、ボールを持っていない時に何を準備していたか、切れた瞬間にドライブを選べたか。プレーの中身、つまり判断です。
冒頭の保護者の方にも、僕はこう答えました。個人技の派手な伸びは今は見えないかもしれません。でもコーチ陣から見ると、考えてプレーするプロセスはしっかり踏んでいて、成長していると感じています。ただ、今すぐ目に見える成長はお約束できないかもしれません。長い目で見た時に絶対に必要な土台を、今作っています——と。
きれいごとに聞こえるかもしれませんが、逆なんです。「目に見える成長は約束できない」と言うのは、指導者としてはかなり勇気のいる正直な言葉です。すぐ見える成長だけを求めるなら、簡単な方法があります。決まったパターンの動きを覚えさせて、体の大きい子にボールを集めればいい。試合はそれっぽくなります。でもそれをやると、高校以降に何も残らない。
「ミニバスで上手かった子」が、その後どうなったか
僕がこの方針を確信している理由は、シンプルな観測です。ミニバスや中学でめちゃくちゃ上手かった選手が、その後のカテゴリーに残っていないケースを、僕は本当にたくさん見てきました。
早くに完成した子は、早くに頭打ちになりやすい。今持っている武器で勝て続けてしまうので、判断や工夫を磨く必要に迫られないからです。だから僕はコーチ仲間との会話でも、「早熟な選手にはしたくないから、今こういう育て方をしている」とはっきり言っています。上達が「遅い」ように見える時期は、遠回りしているのではなく、後から効く部分を先に作っている時期であることが、実際にあるんです。
もちろん、全部がそうだとは言いません。ただ少なくとも、「今の時点の上手さの順位」と「最終的にどこまで行くか」は、親が思っているよりずっと相関が弱い。これは現場の人間の共通認識だと思います。
変化が「見える」までには、時間差がある
もうひとつ、上達のスピードには本当に個人差があります。
うちのスクールに半年通ってくれている中学生がいます。最初はシュートフォームもバラバラで、ドリブルもままならなかった。その子が今、シュートがよく入るようになりました。でも振り返ると、変化が見え始めたのは3ヶ月を過ぎたあたりからです。一度伝えただけでパッと変わる子もいます。でも多くの子は、3ヶ月続けてようやく気持ちの変化が見え、半年でプレーに現れる。この時間差は、才能の差というより、変化が表に出てくるまでのタイムラグの差です。
厄介なのは、この「まだ表に出ていない期間」に、周りの子の目に見える成長だけが視界に入ることです。比べる物差しが「隣の子の今」になった瞬間、わが子の水面下の変化は全部ノーカウントになってしまう。
だから僕は、比べる相手を変えることを提案しています。3ヶ月前のその子と、今のその子。「前は打てなかった場面で打ったね」「もらいに行く動きが増えたね」。結果ではなくプロセスを拾う言葉は、水面下の変化をちゃんとカウントに入れる言葉です。そしてそれを一番近くで言えるのは、コーチではなく親だと思っています。
よくある質問
Q. 見守ると言っても、練習をだらだらやっているように見える時はどうすれば?
A. 気になりますよね。ただ、取り組む姿勢の指摘は指導者の仕事にさせてください。親御さんが両方の役をやると、子どもは家でもコートでも評価され続けることになります。気になることがあれば、子どもに直接ではなく、指導者に共有してもらうのが一番効きます。
Q. 本人に危機感がなさそうなのが一番心配です。
A. 危機感は、外から注入するとだいたい「やらされ感」に化けます。僕が見てきた限り、火がつくのは悔しい経験を本人が消化した時か、できた経験が増えて欲が出た時です。親にできるのは火をつけることではなく、火が消えないように薪(できた経験)を一緒に数えることだと思っています。
Q. それでも半年、1年と変化がなかったら?
A. 環境との相性を疑っていい頃だと思います。頑張っても変化が出ない場所で我慢を続けることが、成長につながるとは限りません。指導者に率直に相談する、別の環境を体験してみる。動くこと自体は逃げではありません。
まとめ
上達が遅く見える時期は、多くの場合、成長が止まっている時期ではなく、成長が目に見える形になる前の時期です。そして「今の上手さ」と「最終的な到達点」の相関は、思っているより弱い。だからこそ、隣の子ではなく過去のその子と比べる物差しを、親が持っておくことに意味があります。
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