RYOTA SUKEGAWA挑戦育成

発信 — ONE STEP FORWARD

ミスは情報だ — レジリエンス(折れない心)の育て方

一度のミスで、その日ずっと引きずってしまう。試合で失敗した次の週から、練習に行きたがらなくなる。そういうお子さんを見ていると、「うちの子はメンタルが弱いのかも」と思ってしまうかもしれません。僕は、そうではないと思っています。

僕は札幌でバスケットボールスクールを3拠点(真駒内・南3条・新琴似)運営し、100名の子どもたちと関わっています。バスケ歴は27年、認定レジリエンスカウンセラーでもあります。今日は、折れない心をどう育てるかという話です。

レジリエンスは、才能ではなく筋肉

レジリエンスとは、折れない心、回復する力のことです。これは生まれつきの才能ではなく、環境と関わり方で育てられる「筋肉」だと僕は考えています。

先に正直なことを書きます。僕は今でも、現役の試合で大事な場面でミスをすると頭が真っ白になります。だから、ミスして下を向く子の気持ちは痛いほど分かります。

つまり、レジリエンスがある人というのは、落ち込まない人ではありません。落ち込むけれど、戻ってくる道を知っている人です。ここを取り違えると、「動じないこと」を子どもに求めてしまいます。大人の僕でもできていません。

そしてもう一つ。レジリエンスは「元に戻る力」だけを指すものでもないと思っています。僕は病気で一度5人制から離れて、戻った先が3x3でした。元に戻れないと分かったあとで、次に立てる場所を探す。それもレジリエンスです。

「ミスは情報だ」は、気休めではない

その第一歩が、「ミスは情報だ」という捉え方です。失敗を人格の否定ではなく、次に活かすデータとして扱う。この一点を大人が体現するだけで、子どもは失敗から立ち上がる力を身につけていきます。

これは前向きな言い換えではありません。実際に、情報として使えるからです。

シュートが外れた。これは「下手だ」ではなく、「今日の距離感はこう」「体が流れる方向はこっち」という情報です。パスを取られた。これは「判断が悪い」ではなく、「あのタイミングであの角度は通らない」という情報です。データとして扱うと次に何を試すかが決まりますが、人格の話にすると何も決まりません。

僕が試合や練習を見ている時、実は、ミスそのものはあまり気にしていません。ミスは誰でもします。プロでもします。だから「ミスした」という事実より、じっと見ているのは、その「次の数秒」です。

ミスした後、その子が何をするか。下を向くのか。固まるのか。すぐ次の守りに走り出すのか。うまくなる選手とそうでない選手の差は、ミスの数より、ミスの「次の一歩」の速さに出ます。

引きずっている時間が、次のミスを呼ぶ

一度してしまったミスは、消せません。パスを取られた、シュートを外した、抜かれた。起きてしまったことは、どうやってもなかったことにはできない。

なのに、多くの人が、その消せないミスのほうを何秒も見つめ続けてしまう。「あー、やっちゃった」と。その間に、試合は進んでいます。相手はもう次の攻撃に入っている。つまり、ミスを引きずっている時間は、たいてい、もう一つのミスを呼ぶんです。

僕が指導でずっと大事にしている合言葉のひとつに、「ネクストプレー」があります。ミスをしたら、引きずらずにすぐ次に向かうという考え方です。具体的には、ミスした瞬間に、まず体を次の方向へ動かす。パスを取られたらすぐ守りに戻る。シュートを外したらリバウンドに飛び込む。頭で「切り替えよう」と思うより、先に足を動かしてしまう。体が次に向かうと、心もあとからついてきます。

偉そうに言っていますが、僕自身、ずっとミスを引きずるタイプでした。でも現役を続けていて、はっきり分かったことがあります。引きずっても、いいことは一個もない。引きずった分だけ次のプレーが遅れて、傷口が広がる。だから僕は、自分にもこう言い聞かせています。「ミスは、あとで反省すればいい。今は、次の一歩」。試合中の数秒は、反省する時間ではなく、戻る時間なんです。

現場で気づいたことをひとつ。ミスした子に「ドンマイ」と声をかける。優しくていい言葉です。でも「ドンマイ」だけだと、その子はミスのことを考え続けてしまうことがある。それより効くのが、「次っ!」という短い一言です。「ドンマイ」は過去のミスに向いていて、「次っ」はこれからのプレーに向いている。この違いについてはバスケでミスが怖い子どもへに詳しく書きました。

立ち直りには、設計が必要だった

ここが、僕がレジリエンスカウンセラーとして学び、そして自分の体で確かめたところです。

立ち直る力は、ただの根性では作れません。気合いで全部を乗り越える。落ち込まないようにする。常に前向きでいる。それだけでは難しい時があります。

僕がアキレス腱を切って動けなかった時、やっていたのは「前向きになること」ではなく、行動を先に決めておくことでした。朝起きたらリハビリをする。昼に本を読む。夜に今日の気持ちをノートに書く。週に一回、できるようになったことを記録する。

気持ちが前向きだから行動できるのではなく、行動が少しずつ気持ちを支えてくれることがあります。順番が逆なんです。

子どもにも、この設計はそのまま使えます。試合で崩れた日に「切り替えよう」と言うより、崩れた時にやることを一つ決めておく。ミスしたらまずゴールに向かって走る。家に帰ったら、今日できたことを一つだけ言う。

この「一つだけ」が大事です。落ち込んでいる時の子どもは処理能力が下がっています。3つ渡すと、たいてい0になります。

そしてもう一つ。ミスは、一人で抱えなくていい、ということです。僕自身、ミスをした時に味方が「次いこ!」とカバーに走ってくれると本当に救われます。一人なら引きずってしまうミスでも、誰かが助けてくれると、すっと次に行ける。ミスを責め合うチームより、助け合うチームのほうが結局は強い。レジリエンスは、個人の中だけで完結する力ではありません。

よくある質問

Q. 「メンタルが弱い」のは、性格でしょうか?

A. 僕は性格の話にしないようにしています。落ち込みやすさに個人差はあると思いますが、現場で見てきた限り、変わるのは「落ち込まなくなること」ではなく「戻るのが速くなること」でした。しかもそれは、決めごとを一つ持っているかどうかで変わります。性格を変えようとするより、戻り方を用意するほうが現実的です。

Q. 家で試合の反省をさせるべきでしょうか?

A. 僕は、反省そのものより、タイミングの問題だと思っています。試合直後の子どもは、まだ感情が整理されていません。そこで反省を求めると、自分を守るために黙ってしまう子がいます。僕は、気持ちが落ち着いてから、次に試すことを一つ決めるくらいでちょうどいいと感じています。帰り道の関わり方はミニバスの試合後、車内での保護者の声かけに書きました。

Q. 親自身が、子どものミスを引きずってしまいます。

A. すごく自然なことだと思います。僕も自分の子のことでは冷静でいられません。ただ、大人が引きずっている時間は、子どもにも見えています。だから僕は、自分にも「次っ」を使うようにしています。反省は後でする。今は、次の一歩。大人がそれをやっている姿は、言葉で教えるより強く伝わります。

まとめ

認定レジリエンスカウンセラーとして、そして病気・怪我・挫折を越えてきた一人の実践者として、僕は断言できます。折れない心は、加点主義の心理的安全性の中でしか育ちません。

そのうえで今日いちばん伝えたかったのは、レジリエンスは気合いではなく、設計と習慣で育つということです。ミスを情報として扱う。次の一歩を決めておく。一つだけにする。一人で抱えさせない。どれも、才能の話ではありません。

目先の勝利のために子どもを萎縮させるのではなく、社会に出ても通用する人間性を育てる。それが「挑戦育成」です。

挑戦する子は、環境で決まる。環境をつくるのは、僕たち大人です。

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