シュートチャンスなのに、打たずにパスを回す。1対1を仕掛けない。ミスした後、明らかに動きが小さくなる。——わが子のそんな姿を見て、「もっと思いきってやればいいのに」ともどかしく感じている親御さん、多いと思います。
先に正直に言います。僕はバスケ歴27年、今も現役でプレーしていますが、大事な場面でミスをすると、いまだに頭が真っ白になることがあります。指導する側になっても、です。だから、ミスして下を向く子の気持ちは、痛いほど分かります。そのうえで、札幌のスクールで100名の子どもたちを見てきて確信していることを、今日は書きます。
ミスは消せない。見るべきは「次の数秒」
まず大前提から。ミスは、毎日起きます。練習でも試合でも、どれだけ気をつけていても、必ず起きる。プロでも、世界のトップでも、90分の試合の中でミスはずっと起き続けています。だったら、子どもがミスをするのは当たり前なんですよね。
そして、一度してしまったミスは、消せません。パスを取られた、シュートを外した。起きてしまったことは、どうやってもなかったことにはできない。
なのに、多くの人が、その消せないミスの方を何秒も見つめ続けてしまう。「あー、やっちゃった」と。その間に試合は進んでいて、相手はもう次の攻撃に入っている。つまり、ミスを引きずっている時間は、たいてい、もう一つのミスを呼ぶんです。
だから僕が試合を見ている時、ミスそのものはあまり気にしていません。じっと見ているのは、その「次の数秒」です。下を向くのか、固まるのか、すぐ次の守りに走り出すのか。うまくなる選手とそうでない選手の差は、ミスの数より、ミスの「次の一歩」の速さに出ます。
「ドンマイ」より、「次っ」
偉そうに言っていますが、僕自身、ずっとミスを引きずるタイプでした。頭が真っ白になったあと、失敗を何分も引きずって、次のプレーが手につかない。そんなことの連続でした。
でも、現役を続けていてはっきり分かったことがあります。引きずっても、いいことは一個もない。引きずった分だけ次のプレーが遅れて、傷口が広がる。だから僕は自分にこう言い聞かせています。「ミスは、あとで反省すればいい。今は、次の一歩」。試合中の数秒は、反省する時間じゃなく、戻る時間なんです。
ここで、声かけの話を一つ。ミスした子に「ドンマイ」と声をかける。優しくていい言葉です。でも「ドンマイ」だけだと、その子はミスのことを考え続けてしまうことがあります。「ドンマイ」は過去のミスに向いている言葉だからです。
それより効くのが、「次っ!」という短い一言。「次っ」は、これからのプレーに向いています。たった一文字二文字ですが、子どもの目線を過去から未来へぐっと引っぱってくれます。僕はミスした子に、よく「はい、次!」と声をかけます。責めるためじゃなく、前を向かせるために。切り替えの合図を、大人が言葉で出してあげるイメージです。
消極的になる犯人は、技術ではなく「外したらどうしよう」
シュートが入らない時期の話をすると、原因はフォームだけじゃありません。「外したらどうしよう」という不安があると、体が固くなって、いつもの動きができなくなる。フォームをどれだけ直しても、心が縮こまっていたら入らない。むしろ犯人は、技術よりこっちのことの方が多いんです。
消極的なプレーも同じ構造です。ミスが怖い子は、技術が足りないのではなく、「ミスした後に起きること」が怖い。怒られる、ベンチに下げられる、ため息をつかれる。それが怖いから、安全なプレーしか選ばなくなる。そしてそれは、いちばん成長から遠い場所です。
逆に言えば、「失敗しても、すぐ次に行けばいい」と思えている子は、思いきった挑戦ができます。切り替えの速さは、ミスを怖がらないための土台なんです。
失敗を咎めない環境で、子どもは変わる
僕のスクールに、印象に残っている子がいます。普段は「できないことがあると、すぐに拗ねて諦めてしまう」と親御さんが心配していた子でした。その子が、失敗を一切咎めない環境の中で、まだ届かないレイアップシュートの練習に、失敗を恐れず2時間夢中で没頭したんです。いちばん驚いていたのは、親御さんでした。
子どもが変わったのではなく、環境が変わっただけです。ミスを「悪いこと」として扱う場所では、子どもは挑戦をやめる。ミスを「挑戦した証拠」として扱う場所では、同じ子が何度でも挑戦する。僕はこれを、何十回も見てきました。
だから僕の現場では、ミスは責める対象ではなく、ただの情報です。「今のミスで、何が分かった?」——それだけ。そして家庭でも、同じ空気はつくれると思っています。試合でミスした日に、家でそのミスを蒸し返さない。挑戦した事実の方を言葉にする。「あの場面、逃げずに打ったね」。それだけで、子どもの中の「ミス=怖いもの」は、少しずつ書き換わっていきます。
よくある質問
Q. ミスを怖がるのは、性格だから直らないのでしょうか?
A. 僕は性格ではなく「環境への適応」だと考えています。ミスを責められる環境で消極的になるのは、むしろ賢い適応です。環境と声かけが変われば、行動は変わります。実際に変わった子を、僕は何人も見てきました。
Q. 「ミスしてもいいよ」と言っているのに、挑戦しません。なぜでしょう?
A. 言葉と態度がズレていないか、僕自身もよく点検します。「ミスしてもいい」と言いながら、ミスの後にため息をついたり、車で反省会を始めたりすると、子どもは態度の方を信じます。言葉より、ミスが起きた瞬間の大人の反応が、子どもにとっての本当のメッセージです。
Q. 切り替えが遅い子に、家でできることはありますか?
A. 僕が親御さんに伝えているのは、結果ではなく切り替えを褒めることです。「外した後、すぐ戻ってたね」「ミスの後のディフェンス、良かったよ」。次の一歩に注目が集まると、子どもは「ミスしても取り返せる」という感覚を育てていきます。
まとめ
ミスは消せません。でも、次の一歩は自分で速くできます。そして、その一歩を速くするのは、根性ではなく、「ミスしても大丈夫だ」と思える環境です。
僕は今でもミスで頭が真っ白になります。それでも挑戦を続けられているのは、ミスを責めない仲間と環境があったからです。子どもも同じ。ミスを恐れず自分から仕掛けられる子は、才能ではなく、環境で育ちます。その環境づくりの最初の一歩は、家庭のいちばん近くの大人の、ミスへの反応から始まると僕は思っています。
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