RYOTA SUKEGAWA挑戦育成

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ミニバスで補欠。試合に出られない我が子への声かけ

朝早く起きて、お弁当を作って、体育館まで送っていく。応援席から我が子を探す。でも、試合が終わるまでその子はベンチに座ったままだった——。ミニバスの保護者の方から、この話を本当によく聞きます。しかも、これは口に出しにくい悩みです。「うちの子、試合に出られなくて」と言った瞬間、レギュラーの子の親には言いづらいし、コーチに言えば文句に聞こえてしまう気がする。だから、多くの親御さんが一人で抱えています。

僕は札幌でバスケットボールスクールを3拠点(真駒内・南3条・新琴似)運営していて、100名の子どもたちと保護者の方に関わっています。バスケ歴は27年。今日は「試合に出られない我が子に、どう声をかけるか」を、僕自身がベンチに座り続けた経験から書きます。

高校まで主役だった僕が、大学でベンチに座った

僕は高校まで、北海道ではまあまあ強いチームで、比較的主役に近い立場でプレーしていました。

それが、大学に入った瞬間に変わりました。全国のトップクラスの選手が集まってくる。今まで自分が一番だと思っていた感覚が、まったく通用しない。気づいたら、メインで出られる機会がどんどん減っていきました。

正直、しんどかったです。プライドもある。なんで自分が、という気持ちもある。しかも、その時間にずっと考えていたのは「どうやって出場時間を取り返すか」でした。今振り返ると、これがいちばん苦しかった原因だったと思います。出られない時間が、ただ耐えるだけの時間になってしまうからです。

だから、ベンチで終わる我が子を見ている保護者の気持ちが、想像ではなく実感として分かります。そして、その子自身がどんな気持ちでそこに座っているかも。

出番の量と、成長の量は、同じものではない

ここが今日いちばん書きたいところです。

僕らは、つい出場時間を成長のものさしにしてしまいます。出た=伸びている、出ていない=止まっている、というふうに。でも現場で子どもたちを見ていて思うのは、この二つはかなり別物だということです。

出場時間は、そのチームの、その時点での、そのコーチの判断です。学年構成、チームの戦い方、その日の対戦相手、体格差。子ども本人の努力とは関係のない要素がたくさん混ざっています。一方で成長は、もっと静かなところで進んでいます。相手の癖に気づけるようになった。ミスした後に下を向く時間が短くなった。仲間がミスした時に声をかけられるようになった。どれも、スコアシートには一行も残りません。

僕が大学のベンチで変えたのは、この「軸」でした。問いを「どうやって出場時間を取り返すか」から、「出ていない今、何ができるか」に変えたんです。相手をよく観察する。味方の動きの癖を覚える。自分が出たら最初に何をするかを決めておく。そしていざ出たら、限られた時間で一本のシュートを確実に決める。一本のルーズボールに全力で飛び込む。

不思議なもので、そうしているうちに少しずつ試合に絡ませてもらえるようになりました。ただ、僕はこれを「こうすれば出られますよ」という話にはしたくありません。順番が逆だと思っているからです。出るために準備するのではなく、準備している時間そのものが、その子を作っている。出番はその後からついてくることもあるし、こなかったこともあります。それでも、あの時間は無駄ではありませんでした。

僕が「出れた?」と聞かないようにしている理由

指導する立場になった今、僕は「出た・出ない」で一喜一憂しないようにしています。

理由は単純で、大人が出場時間だけを見ていると、子どもも「出ること」だけがゴールになってしまうからです。子どもは、大人が何を見ているかをよく見ています。帰り道に毎回「今日は出れた?」と聞かれれば、その子にとっての試合の価値は「出たかどうか」に固定されていきます。そうなると、出られなかった日は丸ごと失敗の日になってしまう。

だから僕が聞きたいのは、こういう問いです。

「今日、ベンチから何が見えた?」「相手のチームで、うまいなと思った子いた?」「次、出たら最初に何したい?」

出場時間ではなく、その子の中身に光を当てる問いです。これに正解を出させる必要はありません。「分からない」と返ってきてもいい。その時は、僕が見ていた事実を一つだけ渡します。「あの場面、コートの選手より先に立ち上がって声出してたの見てたよ」。評価ではなく、見ていたという事実を渡すだけです。

そして、もし子どもが悔しがっていたら、その悔しさは否定しなくていいと思っています。「次は出られるよ」と急いでフォローしなくてもいい。悔しいのは、本気だった証拠ですから。「悔しいね。その悔しさ、大事だよ」。僕は、それで十分だと思っています。

「辞めさせるべきでしょうか」と聞かれた時

出番が少ない状態が続くと、親御さんの中に必ずこの問いが浮かびます。かわいそうだから、環境を変えてあげたほうがいいんじゃないか、と。

僕がこの相談を受けた時に見るのは、出場時間ではなく、その子が体育館に向かう時の顔です。行きたくないと言っているのか、それとも出番は不満だけど練習には行きたがっているのか。ここが決定的に違います。前者なら環境を見直す話をします。でも後者なら、僕は「もう少し見ませんか」と伝えることが多いです。バスケそのものが嫌いになったわけではないからです。

そしてもう一つ、僕が正直にお伝えするのは、辞めるかどうかを親が先に決めないほうがいい、ということです。子ども自身が「移りたい」と言ったのか、親のほうが耐えられなくなったのか。ここを分けて考えるだけで、判断はだいぶ違ってきます。

親御さんの不安は、まったく自然なものです。時間もお金もかけている。周りの子に置いていかれないかと心配になる。僕は、それを責めたい気持ちはひとつもありません。ただ、その不安をそのまま子どもに渡してしまうと、子どもは「次にどうするか」より先に「親をがっかりさせている」に意識が向いてしまうことがあります。

よくある質問

Q. コーチに「なぜ出られないのか」を聞いてもいいのでしょうか?

A. 聞いていいと思います。ただ僕は、聞き方を「なぜ出さないのか」ではなく「今、うちの子に何が足りていないと見えますか」にすると、話がまったく変わると感じています。前者は評価への抗議に聞こえやすく、後者は課題の共有になります。指導者側も、後者のほうがはるかに答えやすいです。

Q. 本人が「どうせ出られないから」と言い始めました。どうしていますか?

A. その言葉を否定せずに、一度そのまま受け取るようにしています。「そう思うよね」と。そのうえで、僕なら「じゃあ、出た時に一個だけ絶対やることを決めとこうか」と聞きます。出番の量は本人にコントロールできませんが、出た時の一本は本人が決められる。コントロールできる場所に、話を戻すだけです。

Q. 上手い子と比べてしまう自分が嫌になります。

A. 比べてしまうのは、親として当たり前だと思います。僕も自分の子を見ていて、比べる気持ちがまったく起きないわけではありません。僕がやっているのは、比べる相手を「他の子」から「半年前のこの子」に置き換えることです。半年前にできなかったことを一つ挙げてみると、意外と出てきます。それだけで、見ている景色がだいぶ変わります。

まとめ

試合に出られない時期を、僕は「成長が止まっている時期」とは思っていません。出場時間は今のチームの中での結果であって、その子の成長そのものではないからです。この二つを切り離して見られるようになると、親も子も、その日一日を丸ごと失敗にしなくて済みます。

僕自身、大学でベンチに座っていたあの時間を、今でも無駄だったとは思っていません。観察する力、準備する力、与えられた場所で全力を出す力。今の僕を作っているものは、だいたいあの時間に身についたものです。

出番の有無で、その子の価値は決まりません。決まるのは、出ていない時間をどう過ごしたかだけです。そして、その時間を「ただ待つ時間」にするか「準備の時間」にするかは、隣にいる大人の見方でずいぶん変わります。

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この記事の話を、1冊にまとめました

『ミニバス保護者の教科書——ミスを恐れず、試合で自分から仕掛ける子になる』。試合後の声かけ、辞めたい、補欠、比較、環境選び。ミニバス保護者の悩みに答えた全5部25章です。

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記事を書いた僕が、札幌でバスケスクールをやっています

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