夏休みの真っ只中。大会や合宿が続く子もいれば、チームの練習が減って時間を持て余している子もいる時期だと思います。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。現場で見ていて、いつも思うことがあるんです。子どもがいちばん伸びるのは、たぶん夏だな、と。夏の前と後で、別人みたいに変わって戻ってくる子がいます。一方で、あんまり変わらない子もいる。同じ夏を過ごしているのに、なぜ差がつくのか。今日はその話です。
なぜ、夏に伸びるのか
いちばんの理由は、「まとまった時間」が取れるからです。
ふだんは学校があって、宿題があって、練習も細切れになりがちです。でも夏休みは、一つのことに続けて取り組める。バスケットの上達は、実はこの「続けて、まとまって」がすごく効きます。
それから、夏は大会や練習試合が多い。実戦の経験をたくさん積めて、試合で課題が見えて、その課題に時間をかけて取り組める。この「試合と練習の往復」を濃くできるのが夏です。つまり夏は、伸びるための条件がそろっている季節なんです。
僕の夏は、ひたすら走る夏だった
ここで、僕自身の夏の話を少しさせてください。
僕が中学・高校の頃の夏は、もう、ひたすら走る夏でした。コートの往復ダッシュを延々とやる。本数を増やして、また減らして、それを何セットも。一本でも外したらやり直し。本当に走ってばかりいました。
大学に入ってもすごかった。山での合宿があって、本来は長距離の選手が走り込むような場所で、朝六時からダッシュを何十本、坂道も走る。死ぬほど走って、そのあとトレーニング。あの合宿は本当に憂鬱でした。
正直、あれを乗り越えたからこそ今の自分がある、とは思っています。夏は他のチームもしっかり走り込む時期で、強度を甘く見ちゃいけないのも事実です。でも、あの頃の僕がぜんぶ正しかったとも思いません。やみくもに量をこなせばいい、というものでもないんです。
差がつくのは量ではなく、「一つ」を決めたかどうか
じゃあ、なぜ伸びる子とそうでない子に分かれるのか。差は、ただの量じゃない。過ごし方です。
よくあるのが、夏だからとあれもこれも詰め込んでしまうパターン。練習を増やして、合宿に行って、自主練もして。一見頑張っているように見えて、全部が中途半端になって、気づいたらただ疲れて終わった、ということがけっこうあります。
逆に、ぐっと伸びる子は、たいてい「一つ」を決めています。この夏は左手のドリブルを徹底的に、とか。シュートのこの形を、とか。一つに絞って、まとまった時間で反復する。だから夏明けに、はっきり「できるようになった」と分かるんです。
そして、見落とされがちなのが休むことです。夏は暑くて、練習も試合も増えて、体にはふだん以上の負担がかかります。休養を計画に入れずに詰め込むと、夏の後半でバテたり、怪我につながったりする。伸びる夏は、「頑張る日」と「休む日」がちゃんとセットになっています。しっかり動いて、しっかり休んで、しっかり食べる。暑い夏だからこそ、この当たり前がいつも以上に効きます。
北海道の夏でも、この時期の体育館は相当な暑さになります。僕も現場に立っていて、練習の組み立てを夏仕様に変える時期です。こまめな水分補給と休憩はもちろん、子どもの顔色や口数は、いちばん分かりやすいサインです。「いつもより静かだな」と思ったら、メニューより体調を疑う。夏の頑張りは、安全の上にしか積み上がりません。ここは大人が守ってあげたいところです。
「やらせなきゃ」を、手放す
最後に、僕が気をつけていることを一つ。夏になると、大人の方がちょっと焦るんですよね。「この夏で差をつけさせなきゃ」「やらせなきゃ」と。その気持ちはすごく分かります。僕もつい思います。
でも、いちばん伸びる夏は、「やらされた夏」じゃないんです。「好きで、夢中になれた夏」です。子どもが自分から体育館に行きたくなる。もう一本打ちたくなる。その状態を守れた夏がいちばん伸びる。大人が量を詰め込んで、子どもが「やらされている」と感じた瞬間に、伸びは止まってしまいます。
これは、強度を上げないという意味ではありません。大事なのは、その強度に本人が自分から向かう形を作れるか。「たくさんやらせる」ではなく、「本人が向かいたくなる状態をどう作るか」。僕はいつもそこを考えています。
よくある質問
Q. 夏休み、1日何時間くらい練習させるべきですか?
A. 時間で決めない方がいい、が僕の答えです。ダラダラ3時間より、集中した40分の方が残ります。目安にするなら時間ではなく、「今日の一つ」ができたかどうか。できたら短くても終わっていいし、夢中で続くなら (体調と相談しながら) 延びてもいい。時間は結果であって、目標ではないと思っています。
Q. チームの練習と大会で疲れ切っていて、自主練どころではありません。
A. その状態なら、休む方が伸びると思います。疲労が抜けないまま量を足しても、動きは雑になって、怪我のリスクだけ上がります。大会が続く時期の家庭の役割は、練習を足すことより、ごはんと睡眠と「頑張ったね」を整えることです。
Q. 家庭では何をサポートすればいいですか?
A. 僕のおすすめは、夏の初めに「この夏の一つ」を子どもと決めることです。決めるのは本人。親は「じゃあそれ、夏の終わりに見せてね」と楽しみにする側に回る。あとは、暑さ対策と食事と休みの計画。技術のサポートより、続けられる環境のサポートです。
まとめ
夏は、伸びる季節です。でも、伸びるかどうかは過ごし方で決まります。詰め込んだ量じゃなく、「一つを、好きで、続けられた」かどうか。
あれもこれも、じゃなく、「この夏は、これ」と一つ決める。それを好きなだけ続けられる環境を整えて、しっかり休む日もつくる。それだけで、夏は子どもをぐっと前に進めてくれます。夏の終わりに「できるようになった」と笑う顔を、楽しみにしていてください。
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