RYOTA SUKEGAWA挑戦育成

発信 — ONE STEP FORWARD

小学生アスリートの睡眠。上手くなりたいなら僕は「まず寝て」と言う

「うちの子、もっと上手くなるには、どうしたらいいですか」。札幌でバスケットボールスクールを運営している僕が、保護者の方からいちばんよく聞かれる質問です。

たいてい期待されているのは、「この練習を足しましょう」という答えだと思います。でも、僕がけっこう本気で大事にしているのは、こっちです。まず、よく寝て、よく食べること。技術より、そっちが先だ、ということです。拍子抜けするかもしれません。でも、100名の子どもたちを見てきて、この順番を間違えている家庭が本当に多いんです。

僕が「土台」にこだわる理由

理由は二つあります。

ひとつは、僕がアスリートフードマイスターという、スポーツと食事についての資格を取っているからです。学べば学ぶほど、子どもの体が、食べたものと寝た時間で作られていることを思い知りました。

もうひとつは、もっと個人的な理由です。僕は病気をしたり、大きな怪我をしたりして、自分の体を一度、失いかけたことがあります。当たり前に動けることが、当たり前じゃない。そういう時期を通ったから、体の土台がどれだけ大事か、頭ではなく肌で分かっています。技術はあとからいくらでも積めます。でも、土台が崩れていたら技術は乗らないし、何より怪我をします。

寝ている間に、体は伸びる

子どもの体は、起きている時間より、寝ている時間に作られている部分が大きいと言われます。練習で受けた刺激を体に定着させるのも、成長そのものも、休んでいる間に進む。つまり、寝不足のまま練習量だけを増やすのは、種をまいた畑に水をやらないようなものなんです。

特に今の子どもは忙しい。学校、習い事、宿題、そしてスマホやゲーム。気づいたら寝る時間がどんどん後ろにずれていきます。スポーツを頑張っている子ほど、帰宅が遅くなって、そこから宿題、となりがちです。

僕は、練習をひとつ増やすか迷うくらいなら、まず寝る時間を30分早める方をおすすめしています。地味です。でも、これがいちばん効くことが本当に多い。寝た子は、練習の集中が違います。同じ60分の練習でも、吸収する量が変わるんです。

睡眠は、メンタルにも直結している

もう一つ、現場で見ていてはっきり感じることがあります。睡眠は、技術だけでなく心にも直結しています。

寝不足の子は、ミスした時の立ち直りが遅い。些細なことでイライラしたり、逆にぼんやりして声が出なかったりする。大人も同じですよね。寝不足の日は、小さな失敗が大きく感じられる。挑戦する気力は、実は体力の上に乗っています。

僕は「挑戦を続けられる子は、体の土台がしっかりしている」と言い続けています。よく寝て、よく食べているから、しんどい練習にも向かえるし、ミスしても立ち直れる。心が折れやすくなっている子の生活を聞いてみると、単純に睡眠が足りていなかった、ということが実際にあります。メンタルの問題に見えるものの正体が、睡眠の問題であることは、大人が思っているより多いんです。

家庭でできる、現実的な工夫

とはいえ、「早く寝なさい」で寝てくれたら苦労はないですよね。僕がおすすめしている現実的な工夫をいくつか挙げます。

まず、寝る時刻より「起きる時刻」を固定すること。起きる時間が毎日同じだと、体のリズムが整って、夜も自然に眠くなります。休日に大幅に寝坊すると、月曜の夜に眠れなくなる、という悪循環はよく起きます。

次に、寝る前の30分から、画面を遠ざけること。これは僕自身も耳が痛い話ですが、寝る直前までスマホやゲームの光を浴びていると、眠りの質が下がります。禁止にすると喧嘩になるので、「充電はリビングで」のような仕組みにしてしまう方が続きます。

そして、練習で疲れた日ほど、早く布団に入れてあげること。「今日は頑張ったから、ご褒美に夜更かし」は、せっかくの練習の効果を目減りさせてしまいます。頑張った日のご褒美こそ、しっかり寝ることです。

よくある質問

Q. 小学生は何時間寝ればいいのでしょうか?

A. 一般的に、小学生は9〜11時間程度の睡眠が望ましいと言われています。ただ、必要な量には個人差があるので、時間数より「朝、自分で機嫌よく起きられているか」を目安にするのが現実的です。起こしても起きられない日が続くなら、足りていないサインです。

Q. 練習や試合で帰りが遅く、どうしても就寝が遅れます。

A. 完璧を目指さなくて大丈夫です。遅くなる日があるのは仕方ない。その分、翌日や週の他の日で取り返す、車での移動中に少し眠る、帰宅後の段取りを先に決めておく(お風呂→食事→即就寝など)。週単位で睡眠の合計を守る、くらいの考え方が続きます。

Q. 睡眠と食事、どちらを先に整えるべきですか?

A. どちらも大事ですが、迷うなら睡眠からをおすすめします。寝不足だと食欲も乱れるので、睡眠が整うと食事も整いやすくなるからです。食事については、補食(練習前後の軽い食事)の記事も書いているので、そちらも参考にしてみてください。

まとめ

コートの中の指導は、僕たちコーチの仕事です。でも、睡眠という土台は、家庭がいちばん関われる場所です。「もっと練習しろ」と言うのは難しいけれど、「今日は早く寝よう」は今日からできる。しかも、効果は大きい。

親が子どもの成長のためにできることは、技術を教えることではなく、いい体で練習に送り出してあげることだと僕は思っています。上手くなりたいなら、まず寝る。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。

今夜、練習から帰ってきたお子さんに、「早く寝なさい」ではなく「今日は頑張ったから、しっかり寝よう」と声をかけてみてください。同じ就寝でも、罰と回復では、受け取り方がまるで違います。眠りを、頑張った日のご褒美にしてあげてください。

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