練習の日の朝、着替えが進まない。「今日、行きたくない」とぽつり。楽しそうに通っていたはずなのに、急にどうしたんだろう。無理に行かせるべきか、休ませるべきか——。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。低学年の保護者の方の悩みを追いかけていると、「練習に行きたがらない」は必ず上位に出てくるテーマです。そして先に結論を言うと、僕はこの場面で、理由をあまり聞かなくなりました。今日はその話です。
「行きたくない」と「辞めたい」は別物
まず、いちばん大事な区別からです。「今日行きたくない」は、「バスケを辞めたい」ではありません。
大人だってそうです。僕はバスケ歴27年で、今も現役でプレーしていますが、「今日は体育館に行きたくないな」という日は普通にあります。仕事が好きな人にも、会社に行きたくない朝はある。好きであることと、今日の気分が乗らないことは、両立します。
ところが子どもの「行きたくない」を聞いた瞬間、親の頭の中では「このまま辞めグセがつくんじゃないか」「何か嫌なことがあったんじゃないか」と、一気に大きな話に膨らみがちです。膨らんだ不安のまま「なんで?どうして行きたくないの?」と詰めていくと、子どもは理由をうまく言葉にできず、親は納得できる答えがもらえず、朝の玄関がお互いに苦しい場所になります。
「その日の渋り」は、渋りのサイズのまま扱う。これが出発点だと思っています。
理由を聞いても、本当の理由は出てこない
僕が理由を聞かなくなったのは、聞いても出てこないことが多いからです。
低学年の子は特にそうですが、「眠い」「なんとなく」「疲れた」くらいしか言葉になりません。本当の理由——昨日の練習でうまくいかなかった、仲のいい子が今日休む、単に前の晩に寝るのが遅かった——は、本人も自覚していないことがよくあります。
だから、朝の玄関で原因究明をするのは、あまり分がよくありません。代わりに僕がおすすめしたいのは、行くか行かないかの二択を、少しだけ小さくすることです。
「とりあえず体育館の入り口まで行ってみて、どうしてもだめなら帰っておいで」。うちのスクールでも、入り口で渋っていた子が、コートの音が聞こえた途端に走っていく場面を、僕は毎週のように見ています。体が動き出すと気分が追いつく、というのは大人も子どもも同じです。逆に、入り口まで来てもやっぱり入れない日は、それはもう「今日は休む日」でいい。
それでも休ませるのが怖い親へ
「一度休ませたら、ずるずる休みグセがつくのでは」という不安は、よく分かります。でも僕の実感では、順番が逆です。
休むことを一切許されない子は、「行きたくない」と言えなくなる代わりに、バスケそのものを嫌いになっていきます。行きたくない日に休めた子は、「休んでもまた戻れる」ことを学びます。長く続く子は、休まなかった子ではなく、戻り方を知っている子です。
僕がバスケを27年続けてこられたのは、一度も嫌にならなかったからではありません。病気で離れた時期も、怪我でコートに立てない時期もありました。それでも戻ってこられたのは、バスケが「戻りたい場所」であり続けたからです。義務になった場所には、人は戻りません。
だから、休んだ日の過ごし方だけ、少し気にしてあげてください。責めるでもなく、腫れ物に触るでもなく、普通の休日として過ごす。そして次の練習の日、何もなかったように「今日どうする?」と聞く。それで戻れるなら、何の問題もありません。
「行きたくない」が続くときに見ること
一方で、渋りが毎回続く、行きたくないと言うときの表情が暗い、バスケの話題自体を避ける——そんなサインが重なるときは、「その日の気分」ではなく環境の問題を疑ったほうがいいです。
チェックするポイントは3つです。練習の中で挑戦する場面があるか(できることの反復だけになっていないか)。ミスをしたときに何が起きるか(怒られる・交代させられる環境だと、行きたくないのは自然な反応です)。仲間との関係。この3つのどれかが崩れているなら、声かけで解決する話ではなく、環境を見直す話になります。
子どもは「コーチが怖いから行きたくない」とはなかなか言いません。「なんとなく行きたくない」の形で出てきます。続くときだけ、言葉の奥を見てあげてください。
よくある質問
Q. 「行きたくないなら辞めなさい」と言ってしまいます。
A. 言いたくなる気持ちは分かります。ただ、この言葉は子どもには「弱音を吐いたら取り上げられる」と学習させてしまいます。次から「行きたくない」が言えなくなるだけで、気持ちが消えるわけではありません。僕なら「行きたくない日もあるよね」で一度受けてから、二択を小さくします。
Q. 休ませた日に、家でゲームばかりしていてモヤモヤします。
A. 「練習を休んだ2時間」の使い方を、大人ほど子どもは意味づけていません。休んだ日の過ごし方を責め始めると、休むこと自体に罪悪感がつき、次から言い出せなくなります。休んだ日は普通の休日、と割り切るのがおすすめです。
Q. 行き渋りは何歳くらいまで続きますか?
A. 個人差が大きいですが、低学年のうちは「気分の波」の影響が大きく、学年が上がると理由のある渋り(人間関係・環境)の比率が増えていきます。つまり、渋りの意味は年齢で変わります。低学年の渋りをあまり重く受け止めすぎないことと、高学年の渋りを軽く流しすぎないこと、両方が大事です。
まとめ
「行きたくない」は「辞めたい」ではなく、その日の渋りは、その日のサイズで扱う。朝の玄関で理由を詰めず、二択を小さくして、入り口まで。行けたらそれでよし、行けない日は戻り方を残して休む。そして渋りが続くときだけ、環境を疑う。
行きたくない日があっても、バスケが「戻りたい場所」でありさえすれば、子どもは何度でも戻ってきます。僕自身が、何度も戻ってきた側の人間なので、これは自信を持って言えます。
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