家では上手にドリブルを突いている。練習でもシュートが入っている。なのに試合になると、急に別人みたいに固くなる。ボールをもらいに行かない。打てる場面でパスをしてしまう。帰り道、「なんで試合だとできないんだろう」と、本人よりも親の方がモヤモヤしてしまう——。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちを指導しています。そして正直に言うと、保護者の方からいただく相談の中で一番多いのが、まさにこれです。「練習ではできるんですけど、試合でなかなか力を発揮できないんです」。今日は、この相談に僕が現場でどう向き合っているかを書きます。
試合で出る「緊張のミス」には、パターンがある
公式戦のような独特の空気の中で、子どもたちに出るミスには共通のパターンがあります。僕がコートの横で見てきた限り、だいたいこの4つです。
普段の練習ではしないようなパスを出す
自分で攻められる場面なのに、パスに逃げる
プレー全体が少し消極的になる
いつもなら入るシュートが入らない
並べてみると分かるのですが、これは技術が下手になったわけではないんです。全部、「ミスをしたくない」という気持ちが先に立った時の動きです。つまり原因は手先ではなく、心の側にある。だから家でドリブル練習を増やしても、この問題はなかなか解決しません。
そして大事なことを先に言っておくと、これは性格の欠陥ではありません。あの空気の中でいつも通りにプレーできる小中学生の方が、珍しいんです。
原因は「プレッシャーの中でやった経験」の少なさ
では、なぜ練習ではできるのか。答えはシンプルで、練習にはプレッシャーがないからです。
ハンドリングやシュートなどのスキル練習は、ディフェンスがいない状態でやることがほとんどです。誰にも邪魔されなければ、できるようになる。でも試合では、目の前に相手がいて、時間があって、周りの目があります。プレッシャーのない場所で身につけたことは、プレッシャーのある場所ではそのまま出てこない。ただそれだけのことなんです。
だから僕のスクールでは「ゲームライクに」と常々言っています。ディフェンスをイメージして打つ。試合の場面に近いシチュエーションを作って、その状況の中で1対1をやる。何も考えずに10本打つより、ディフェンスを想像しながら打つ3本の方が意味があるよ、という話は毎回のようにしています。
もうひとつの原因は、挑戦の絶対量です。失敗しないように、うまく練習をこなす子は実はたくさんいます。でも自分のコンフォートゾーンから出ないまま反復しても、上達はある程度で止まってしまう。ドリブルを0.1でも強く突く、ドライブのスピードを少しだけ上げる。その小さな挑戦の積み重ねが、1年後、2年後に大きな差になります。そして試合とは、コンフォートゾーンの外側でプレーする時間そのものです。練習で外に出たことのない子が、試合でだけ外に出られるはずがないんです。
家庭でできるのは、「失敗の値段」を下げること
ここまで読むと「じゃあ家でシチュエーション練習を?」と思われるかもしれませんが、僕が保護者の方にお願いしたいのは、練習面ではありません。
試合で挑戦できない子の多くは、「ミスをしたら何かを失う」と感じています。コーチの評価かもしれないし、仲間の視線かもしれない。そして時には、帰り道の親の表情だったりします。
僕のスクールでは、挑戦した上での失敗なら全然オッケー、むしろたくさん失敗してどんどんうまくなろう、と言い続けています。失敗しないとうまくならないからです。同じことが、家庭でもできます。試合でミスが多かった日に、そのミスを一つずつ振り返らせるのではなく、「あのドライブ、仕掛けたね」と挑戦した事実の方を拾う。それだけで、子どもの中の「失敗の値段」は下がっていきます。
失敗の値段が下がった子から順番に、試合で仕掛けられるようになる。僕が現場で見てきた順番は、はっきりそうです。
よくある質問
Q. 試合前に「緊張しないで」と声をかけるのは効果がありますか?
A. 僕は、緊張は消すものではなく、慣れと準備で減らしていくものだと考えています。「緊張しないで」と言われて消えるものでもないですし、緊張すること自体は真剣な証拠です。声をかけるなら、結果に触れない一言——「楽しんでおいで」くらいで十分だと思っています。
Q. 何ヶ月くらいで変わりますか?
A. 子どもによって本当に差があります。一度伝えただけで変わる子もいれば、3ヶ月ほど続けてようやく気持ちの変化が見え始める子もいます。すぐに変わらなくても、積み重ねが止まっているわけではありません。
Q. 本人が「試合が怖い」と口にするようになりました。休ませるべきでしょうか?
A. 言葉にできているのは、むしろ良いサインだと僕は受け取ります。怖さを話せる相手が家にいるということだからです。無理に背中を押すよりも、まず「怖いんだね」と受け取って、本人が戻りたいタイミングを一緒に待つ。その上で心配が続くようなら、指導者に共有してもらえると現場でも対応できます。
まとめ
練習ではできるのに試合でできないのは、技術の問題でも性格の問題でもなく、「プレッシャーの中で挑戦した経験」の量の問題です。練習をゲームに近づけることはスクールの仕事。そして失敗の値段を下げることは、家庭にしかできない仕事です。
親の関わり方には、実は一人ひとり癖があります。良い悪いではなく、自分がどのタイプの関わり方をしているかを知っておくと、試合の日の一言が変わります。8問で分かる無料の診断を作ったので、よければやってみてください。
▶ 親の声かけタイプ診断(無料・8問)
https://www.resilienthoops.com/koekake
▶ 試合の日の声かけに迷ったら。僕が現場で使っている『声かけチェックリスト30』を公式LINEで無料配布しています