練習ではのびのびプレーできるのに、試合になると固まってしまう。試合の朝から口数が少なくなって、コートに立つと動きがぎこちない。ミニバスの保護者の方から、「うちの子、緊張しやすいんです」という相談は本当によく受けます。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。バスケ歴は27年。そして最初に白状しておくと、僕は今でも、現役の試合の大事な場面で緊張しますし、ミスをすると頭が真っ白になることがあります。指導する側になっても、です。今日は、そんな僕が緊張とどう付き合ってきたかの話です。
緊張は「なくすもの」ではなかった
まず、僕が長くプレーしてきて行き着いた結論から言うと、緊張は消せません。消そうとするほど、「緊張しちゃだめだ」という新しいプレッシャーが増えて、余計に固くなる。僕自身、何度もその沼にはまりました。
だから僕は、緊張を敵として扱うのをやめました。緊張しているのは、その試合が本人にとって大事だからです。どうでもいい試合に、人は緊張しません。つまり緊張は、真剣に挑もうとしている証拠なんです。
僕が子どもに伝えるとしたら、「緊張してるんだね。それだけ本気なんだね」から入ります。「緊張するな」「リラックスして」という声かけは、気持ちは分かるんですが、本人には「緊張している自分はだめなんだ」と聞こえてしまうことがあるからです。
頭より先に、体を動かす
そのうえで、僕が現役の試合で実際にやっているのは、頭で緊張を解こうとせず、先に体を動かすことです。
シュートが入らない時期の僕がそうだったんですが、「外したらどうしよう」という不安があると、体が固くなって、いつもの動きができなくなります。心を直そうとしても、試合中にそんな余裕はない。でも、体は自分で動かせます。
最初の数分は、シュートが入るかどうかより、走る、声を出す、リバウンドに跳ぶ、ディフェンスで足を動かす。結果が関係ないプレーを先にやる。体が試合に入ると、心はあとからついてきます。これは本当にそうで、僕は今でも、緊張した試合ほど最初にルーズボールへ飛び込むようにしています。
ミスをした後も同じです。頭が真っ白になったまま止まるのがいちばん怖い。だから「ミスはあとで反省すればいい。今は次の一歩」と自分に言い聞かせて、先に足を守りに動かします。切り替えの合図が、思考ではなく動作なんです。
試合前の家庭でできること
じゃあ、送り出す側の親に何ができるか。僕が保護者の方に共有しているのは、試合の朝に「結果の話をしない」ということです。
「今日は何点取れそう?」「勝てそう?」という声かけは、応援のつもりでも、子どもの中では「結果を出さないといけない」という荷物になります。緊張しやすい子は、もう十分すぎるほど結果のことを考えています。そこに大人が載せる必要はありません。
僕なら、いつも通りの朝ごはんを食べて、いつも通りの会話をして送り出します。あえて何か言うなら、「思いきってやっておいで」くらい。結果ではなく、挑戦の方に目線を向ける一言です。
それと、緊張して失敗した試合の帰り道に、「なんで緊張なんかするの」と責めないこと。緊張して固まった経験は、本人がいちばん悔しい。その悔しさが残っていれば、次にどうするかは本人が考え始めます。大人の仕事は、その悔しさを恥に変えないことだと思っています。
場数は、緊張を「知っているもの」に変える
もうひとつ、長い目の話をします。緊張への強さは、性格ではなく経験で変わります。
初めての試合で緊張しない子は、ほぼいません。でも、試合を重ねるうちに、「緊張しても、始まってしまえば動ける」「最初の1本を追いかけたら楽になる」という自分なりのデータが貯まっていきます。緊張が消えるのではなく、緊張が「知っているもの」になる。知っているものは、怖さが半分になります。
だから、緊張して固まった試合も、無駄ではありません。それは場数という貯金です。僕は27年やってきて、いまだに緊張しますが、「ああ、いつものやつが来たな」と思えるようにはなりました。それで十分戦えます。
よくある質問
Q. 試合直前に子どもが「緊張する」と言ってきたら、何と返せばいいですか?
A. 僕なら「緊張するよね。僕も今でもするよ」と返します。緊張を否定せず、普通のことにしてあげる。そのうえで「最初は思いきり走っておいで」と、結果のいらない最初の仕事をひとつ渡すと、子どもは動き出しやすくなります。
Q. 緊張で泣いてしまうほどの場合も、試合に出した方がいいのでしょうか?
A. 無理に押し出すことはおすすめしません。泣くほどの緊張の裏には、失敗への恐怖や、周りの期待の重さが隠れていることが多いからです。まずは「出ること」より「コートの近くで安心していられること」から。本人のペースで場数を踏めば大丈夫です。
Q. 練習ではできるのに試合でできないのは、練習が足りないからですか?
A. 量より質の問題であることが多いです。決まった形の反復だけだと、相手や状況が変わる試合ではうまく出せません。試合に近い状況で、見て、選んで、失敗する練習を増やすと、「試合の景色」に慣れて緊張の影響も小さくなっていきます。
まとめ
緊張は、本気の証拠です。消すことはできないけれど、付き合い方は変えられます。頭で解こうとせず、先に体を動かすこと。結果のいらない最初の仕事から入ること。そして、緊張して固まった日も、場数という貯金にすること。
頭が真っ白になりながら27年やってきた僕が言うので、間違いありません。緊張する子は、弱い子ではなく、真剣な子です。その真剣さが空回りしないように、大人は結果の荷物を軽くしてあげられたらと思っています。
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