いっぱい褒めて育てたい。でも、褒め方を間違えると逆効果だと聞くと、何と言えばいいのか分からなくなる。「すごいね」「上手だね」でいいのか。結果を褒めてはいけないのか。スポーツをする子どもの褒め方は、多くの保護者の方が一度は悩むテーマだと思います。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。そして二児の父です。今日は理論の前に、僕自身の失敗談から始めさせてください。
「上手だったね」しか言えなかった夜
去年、上の娘のダンスの発表会がありました。舞台でうまく踊れて、僕はうれしくて、つい言いました。「上手だったね!」。
でもその夜、寝顔を見ながら、ふと思ったんです。あの日、あの子がいちばん頑張ったのは、上手に踊れたことじゃない。緊張して、足がすくんでも、舞台に立って、最後まで踊りきったこと。そこを、僕はちゃんと言葉にできていなかった。「頑張ったね」が、言えていなかったんです。
教える仕事をしていて、褒め方の大切さを人に話している僕でも、我が子の前ではこれです。うれしい時に「すごい!」が先に出るのは、親として自然なことなんだと思います。だから今日の話は、「結果を褒めてはいけない」という話ではありません。
結果だけを褒め続けると、何が起きるか
ただ、結果ばかりを褒めていると、子どもの中に、じわじわとある思い込みが育つことがあります。「結果を出したら、褒めてもらえる」。裏を返すと、「結果が出なかったら、価値がない」。
そう感じ始めた子は、だんだん挑戦しなくなります。新しいことは、最初はうまくいかないのが普通です。失敗すると褒めてもらえないなら、できることだけを無難にやっておいた方がいい。スクールでも、シュートを打てる場面でパスを選ぶ子、できる技しか見せない子の背景に、この思い込みがあることは少なくありません。
もう一つ、結果は自分だけでは決められない、という問題もあります。相手の強さ、その日の調子、審判の判定。自分でコントロールできないもので評価され続けると、子どもはただ不安になります。でも、「最後まで走ったこと」「あきらめなかったこと」は、自分で決められる。そこを見てもらえた子は、結果が出ない日でも、また前を向けます。
「すごい!」のあとに、一言足す
じゃあ、どうするか。僕がたどり着いたのは、「すごい!」を我慢することではなく、そのあとに一言足すことです。
娘の発表会なら、「上手だったね!」のあとに、「でも父さんがいちばんいいなと思ったのは、緊張しても最後まで踊りきったところだよ」。バスケなら、「ナイスシュート!」のあとに、「その前に、走って空いた場所に動いたのがよかったね」。
結果への喜びは、そのまま出していい。うれしいものはうれしい。そのうえで、結果の手前にあった本人の頑張り——挑戦したこと、工夫したこと、続けたこと——を一つ、具体的に言葉にする。「ちゃんと見てたよ」が伝わる褒め方です。
僕は、結果が出た日ほど過程を、結果が出なかった日ほど頑張りを言葉にする、と自分の中で決めています。うまくいかなかった日の「悔しいね。でも最後まで足を動かしてたの、見てたよ」は、どんな技術指導より効くことがあります。
具体的に褒めるには、見ていないと言えない
ここで一つ、正直な話をします。過程を褒めるのは、結果を褒めるより難しいです。なぜなら、見ていないと言えないからです。
点が入ったかどうかは、誰にでも分かります。でも、「ボールを持っていない時に、いい場所に動いていた」は、その子を見ていた人にしか言えません。だから、具体的な褒め言葉は、内容以上に「あなたをちゃんと見ている」というメッセージを運びます。子どもが褒め言葉をどこか信用しない時は、褒め方の技術ではなく、この「見てもらえている感」が足りていないことが多いんです。
試合や発表会の日、結果を見るのと同じくらい、その手前の小さな場面を一つ覚えて帰る。それだけで、帰り道の会話は変わります。
よくある質問
Q. 褒めるところが見つからない試合の時は、どうすればいいですか?
A. プレーの出来ではなく、姿勢の事実を探すのがおすすめです。「声を出してた」「最後まで走ってた」「ベンチで仲間を応援してた」。それも無ければ、「今日も行った」こと自体でいいと僕は思っています。行きたくない日に行った、はそれだけで一つの頑張りです。
Q. 褒めすぎると調子に乗って、努力しなくなりませんか?
A. 結果や才能(「天才だね」)ばかり褒めると、その評価を守るために挑戦を避けるようになることはあります。でも、挑戦や工夫という「行動」を具体的に褒めた場合、その行動は増えていきます。褒める量より、何を褒めるかの問題だと考えると、褒めすぎを恐れなくてよくなります。
Q. 中学年代でも同じ褒め方でいいのでしょうか?
A. 基本は同じですが、思春期は人前で褒められるのを嫌がるようになります。僕は、車の中や帰り道など一対一の場面で、短く事実だけ伝えるのをおすすめしています。「今日の守備、粘ってたな」くらいの一言の方が、長い賞賛より届く年代です。
まとめ
褒め方に正解の台本はありませんが、順番なら僕にも言えます。結果への「すごい!」は素直に出していい。そのあとに、結果の手前にあった本人の頑張りを、一つだけ具体的に足す。それができるように、結果以外の場面を一つ、覚えて帰る。
あの夜言えなかった「頑張ったね」を、僕は次の日、ちゃんと娘に伝えました。ちょっと照れくさかったですが。結果はいつか出なくなる日が来ます。それでも「ちゃんと見てるよ」が伝わっている親子は、強い。僕はそう信じています。
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