早生まれはスポーツで不利なのか。先に僕の答えを言うと、小中学生の「今」に限れば差は確かにあります。でもそれは実力の差ではなく、同じ学年の中で最大11ヶ月ある月齢の差です。「うちの子は3月生まれだから、体が小さくて」。ミニバスの体育館で、この言葉を何度聞いたか分かりません。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちを指導しています。バスケ歴は27年。頭ひとつ大きい子に当たり負けする、選抜に選ばれるのはいつも体の大きい子、という保護者の方の不安は自然なものです。ただ、比べ方の前提が最初から少しずれています。
この記事では、月齢差が体格や評価にどう効いているか、早生まれの子にとっての本当のリスクは何か、そして家で物差しをどう変えるかを、現場で見ているままに書きます。
同じ学年でも、最大11ヶ月の差がある
当たり前すぎて忘れられがちなのですが、4月生まれと3月生まれは、同じ学年の中で約11ヶ月違います。大人の11ヶ月はほぼ誤差ですが、成長期の11ヶ月はまったく別物です。身長も、筋力も、体力も、発達のフェーズそのものが違う。
以前、うちのクラブのコーチ陣とこの話になった時、「この時期の誕生日は、3月生まれと4月生まれで全然違う。でも学校では、そんなの見えないからね」という言葉が出ました。僕はこれが核心だと思っています。
学校生活では、月齢の差はほとんど見えません。教室で並んでいる分には、みんな同じ「同学年」です。だから親には、わが子が「同じ条件で競って、負けている」ように見える。でもコートの上で起きているのは、条件の違う競争です。体の発達が11ヶ月先を行っている子と、これから来る子が、同じ学年という枠でくくられて比べられている。見えない前提の差があるのに、結果だけが見える。だから不安になる。その不安は自然なものですが、比べ方の前提が最初から少し壊れているんです。
この現象には相対年齢効果という名前がついていて、スポーツの世界では昔から知られている話です。ただ僕は、学術的な話よりも現場の実感として伝えたい。今の体格差は、実力差ではなく月齢差。これを知っているかどうかで、親の見え方は大きく変わります。
「今大きい」は、ゴールでは何の保証にもならない
もうひとつ、現場にいる人間がみんな知っていることがあります。ミニバスや中学で体格に恵まれて活躍していた選手が、その後もずっと勝ち続けるとは限らない、ということです。
中学から高校に上がった時、体力も体格も上だった選手に、その後の3年間ずっと勝てないままだったか。まったくそんなことはありません。中学年代はまだ体のフェーズが人によってバラバラで、そこから一気に追いつく子を、僕は現役時代もコーチになってからも何人も見てきました。だからうちのクラブでは、今の体格で勝ち切るバスケではなく、体が追いついた時に伸びる土台の方をあえて優先して育てています。
逆に言うと、早生まれで今苦しんでいる子は、「これから発達が来る側」です。今の差を実力だと本人が信じ込んでしまうことの方が、体格差そのものよりずっと怖い。「どうせ自分は下手だから」という物語を、11ヶ月の月齢差が作ってしまうこと。それが早生まれの本当のリスクだと僕は思っています。
変えられないものを、敗因にしない
じゃあ親は何ができるのか。僕が現場で選手たちに言っていることが、そのまま答えになると思っています。
身長は、明日の朝起きたら10センチ大きくなってほしいと思っても、なっていません。生まれ月も変えられない。そして、変えられないものを敗因にすると、子どもは何をすればいいか分からなくなります。「体が小さいから負けた」で終わった試合からは、次にやることが何も出てこないんです。
だから僕は、変えられるものに目を向けさせます。ポジショニング、判断の速さ、ボールをもらいに行く動き。体格に頼らないプレーは、体が小さい時期にしか本気で磨かれません。実際、小さい時期に工夫を覚えた子は、体が追いついた時に工夫と体格の両方を持った選手になります。
家庭でできるのは、物差しを変えることです。同学年の大きい子と比べるのではなく、その子自身の3ヶ月前と比べる。「今日、もらいに行く動きが増えたね」と、体格が関係ない部分を拾う。早生まれの子に必要なのは特別扱いではなく、フェアな物差しで見てくれる大人が一人いることだと思っています。
よくある質問
Q. 早生まれだと、選抜やスタメンに選ばれにくいのは事実ですか?
A. 小学生年代では、体格が評価に影響する場面は実際にあると感じています。ただそれは「今の体」への評価であって、その子の上限の評価ではありません。選ばれなかった事実よりも、それを本人がどう意味づけるかの方が、その後に大きく効きます。
Q. 体を大きくするために、食事でできることはありますか?
A. 僕はアスリートフードマイスターの資格を持っていますが、魔法の食材はありません。基本は、練習量に見合った量をちゃんと食べること、そして寝ることです。成長期の伸びる時期は子どもごとに違うので、周りと比べて焦って何かを足すより、土台を整えて待つ方が確実だと思っています。
Q. 本人が「どうせ小さいから」と言うようになりました。どう返せばいいですか?
A. 僕なら、否定も励ましもせず「今はそうだね。で、小さい間に何を磨いておく?」と返します。事実は認めた上で、視線を変えられるものに移す。小さい時期に身についた工夫は、後から来る体格と必ず合流します。
まとめ
早生まれは、小中学生の「今」においては確かにハンデがあります。でもそれは月齢差であって、実力差でも才能の差でもありません。そして学校生活ではその差が見えないからこそ、親が正しい物差しを持っておくことに意味があります。
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