子どものために時間を作って、公園や体育館で一緒に練習する。最初は楽しいのに、だんだん口調が強くなって、子どもはふてくされて、最後は喧嘩で終わる——。「親子練習がいつもこうなるんです」という相談を、僕は何度も受けてきました。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。教えることが仕事です。でも先に白状すると、その僕でも、我が子相手だと同じ落とし穴にはまりかけます。今日は、親子練習が喧嘩になる仕組みと、僕が家庭で「やめたこと」の話です。
なぜ、よその子には優しくできるのに
まず、責める話ではないことを確認させてください。親子練習が喧嘩になるのは、愛情が深いからです。
よその子が同じミスをしても、大人は笑って流せます。でも我が子だと流せない。「この子はもっとできるはず」という期待と、「教えてあげたい」という責任感が、他人の何倍も強いからです。期待が強いほど、できない現実との差にイライラする。イライラは口調に出る。子どもは内容より口調に反応して、心を閉じる。closed状態の子に言葉を重ねても入らないので、大人はさらに強く言う。これが喧嘩の仕組みです。
つまり、親子練習の喧嘩は、技術指導の失敗ではなく、関係の設計の問題なんです。だから直すのも、教え方ではなく設計の方です。
僕がやめたこと:家で「監督」をやること
僕が家庭でやめたのは、監督役です。もっと言うと、「教える時間」と「ただの親子の時間」の境界を曖昧にすることをやめました。
指導が仕事の僕でも、家で四六時中コーチをやったら、子どもの逃げ場がなくなります。スクールで頑張って、家でもダメ出しをされたら、その子はどこで息をつけばいいのか。だから、ボールを置いたら監督もやめる。食卓でプレーの反省会をしない。これは僕自身への戒めでもあります。
そして練習中も、僕は「先生と生徒」の形をなるべく崩すようにしています。効くのは、親が教える側に立つことより、親も一緒に下手になることです。
一緒に挑戦すると、空気が変わる
僕は時々、子どもと一緒に、自分も初めてのこと、うまくできないことに挑むようにしています。親が真剣に挑んで、失敗して、子どもに笑われて、それでもまたやる。
これをやると、練習の空気が変わるんです。「やらされるもの」だった練習が、「一緒にやるもの」になる。「パパもできないんだ」「じゃあ一緒にやろう」。そこには、怒られる緊張感がありません。だから思いきり挑める。
バスケの親子練習なら、シュート対決で親が本気で外して悔しがる。子どもが練習している技を、親が教わる側になってやってみる。「教える人と教わる人」を、時々ひっくり返す。子どもは、自分が教える立場になると、驚くほど言語化して考え始めます。実はこれ、いちばん頭を使う練習でもあるんです。
教えたくなったら、質問に変える
それでも、見ていれば言いたくなりますよね。僕も仕事柄、直したいところは山ほど見えます。そこで僕が使っているのは、指摘を質問に変換することです。
「なんで今のパス出さないの」ではなく、「今の場面、他にどんな選択肢があった?」。「シュートの時、膝を曲げて」ではなく、「入った時と外れた時、何が違った?」。正解を渡すのではなく、本人が自分の言葉で振り返る手伝いをする。
これは僕がスクールでもやっていることですが、家庭でこそ効きます。質問には、命令と違って、上下関係がないからです。そして、自分で気づいたことは、教えられたことよりずっと長く残ります。僕自身、親からプレーについて細かく言われた記憶がほとんどないおかげで、自分で考える時間を持てました。
よくある質問
Q. 喧嘩になってしまった直後、どうフォローすればいいですか?
A. 時間を置いてから、練習内容ではなく関係の方を修復することをおすすめします。「さっきは言い方がきつかった、ごめん」と大人が先に謝る。プレーの話はしなくていいです。親が自分の失敗を認める姿は、それ自体が「失敗しても大丈夫」という何よりのメッセージになります。
Q. 子どもの方から「教えて」と言ってくる場合は、教えていいですか?
A. もちろんです。本人に「知りたい」がある時は、いちばん届く瞬間です。ただ、一度に全部渡さず、一つだけ。そして少しできたら、そこで気持ちよく終わる。「もうちょっとやりたい」くらいで切り上げると、次につながります。
Q. 父親が経験者で熱が入りすぎます。練習に付き合わせない方がいいのでしょうか?
A. やめる必要はないと思いますが、役割の分担をおすすめします。技術を教える人はチームやスクールに任せて、家庭は「一緒に楽しむ人」と「話を聞く人」を担当する。経験者の親ほど、この分担で親子関係が楽になったという声を、僕は何度も聞いています。
まとめ
親子練習が喧嘩になるのは、愛情の量の問題ではなく、設計の問題です。家庭から監督をなくすこと。教える側に立ち続けず、一緒に挑戦して一緒に失敗すること。指摘を質問に変えること。
親子練習のゴールは、上達よりも、「この人とバスケをするのは楽しい」という記憶だと僕は思っています。その記憶がある子は、壁にぶつかった時、ちゃんと親に相談しに来ます。それは、どんな技術指導よりも価値のある財産です。
技術は、僕たちのような外のコーチにも教えられます。でも、「一緒にやって楽しかった」という記憶は、親にしか作れません。せっかく同じ時間を使うなら、親にしかできない方を残しませんか。喧嘩の回数は、それだけできっと減っていきます。
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