負けた試合のあと、子どもがノートを開いても、何を書けばいいか分からない。「悔しかった。自分が悪かった。次はもっと頑張る」。そう書いてページを閉じる。でも翌日の練習になると、何を変えればいいのかは曖昧なまま——。バスケノートを書かせているご家庭で、よくある光景だと思います。
僕は札幌でバスケットボールスクールを運営していて、100名の子どもたちに関わっています。今日は、負けた試合を翌日の練習につなげる、僕なりの振り返りの形を書きます。
自分を責め続けても、プレーは変わらなかった
僕自身、負けたあとに頭の中で同じ場面を何度も繰り返したことがあります。大学時代も、3x3でプレーしていた時も。「あのパスを出さなければ」「あそこで決めていれば」「自分のせいで負けたんじゃないか」。そんなふうに考えていました。
ただ、自分を責め続けても、プレーは変わりませんでした。変わり始めたのは、反省の量を増やした時ではなく、振り返る対象を具体的にした時です。
その前に、一つ大事なことがあります。負けた直後から冷静に分析できる選手ばかりではありません。悔しい。腹が立つ。誰とも話したくない。それは自然な反応です。だから僕は、負けた直後に無理やり前向きにならなくていいと思っています。すぐに反省会を始めなくてもいい。感情を無視して分析を始めると、子どもは自分を守ることに意識を使ってしまいます。
少し時間を置いたら、感情と事実を分けてみる。そこで使えるのが、三行だけの振り返りです。
三行ノートの書き方
長い反省文はいりません。僕が提案したいのは、次の三行です。
一行目、今日いちばん悔しかった場面。二行目、その時、自分は何を見ていたか。三行目、次に同じ場面が来たら、何を一つ変えるか。
例えばこうです。「第4クォーターでパスミスをした」「味方だけを見ていて、ディフェンスの位置を見ていなかった」「次はボールを受ける前に、一度ディフェンスを見る」。
「もっと頑張る」ではなく、次に何をするかまで書く。ここまで具体的になると、負けた試合が翌日の練習テーマに変わります。
三行に絞る理由は、反省を浅くするためではありません。悔しい時ほど、人は出来事を大きな言葉でまとめてしまうからです。「全部ダメだった」「自分には向いていない」「また迷惑をかけた」。でも、本当に全部がダメだった試合はほとんどありません。一行目で場面を絞り、二行目で自分の見え方を確かめ、三行目で次の行動を選ぶ。この順番にすると、「自分はダメだ」という人格への評価から、「この場面では何を変えられるか」という行動の検証へ戻ってこられます。
試合に出ていない日でも書けます。「出番が来た時、緊張して最初のプレーが遅れた」「試合へ入る前に、自分が最初にやることを決めていなかった」「次はベンチにいる間に、最初の守備と最初の声を決めておく」。得点やミスだけが振り返りの対象ではないんです。
犯人捜しではなく、流れを見る
もう一つ、親子の会話で気をつけたいことがあります。試合では、最後のプレーが強く記憶に残ります。逆転シュートを外した。終盤にパスミスをした。でも、試合の結果は一つのプレーだけで決まっているとは限りません。その前に戻りが遅れた時間があったかもしれない。リバウンドを連続で取られた時間があったかもしれない。
だから、振り返りに必要なのは、犯人を決めることではありません。流れの中で何が起きていたかを見つけることです。「誰が悪かったか」ではなく、「次に自分が変えられることは何か」。この問いに変わると、負けは少しずつ「情報」になります。
家で動画を見る時も、最後のミスだけを何度も再生しない方がいいと僕は思っています。そのプレーが起きる数秒前まで戻ってみる。ミスの手前に、原因と、次に変えられるものが隠れています。
書くことは、僕を二度助けてくれた
ノートの話をもう少しだけ。僕にとって「書くこと」は、負けた夜だけの道具ではありませんでした。
25歳でアキレス腱を切って、プレーできない時間が続いた時期。ベッドの上でできることは限られていました。その中で僕がやっていたのが、本を読むことと、ノートに書くことです。仲間の試合を見て気づいたこと、自分のプレーをどう変えたいか、戻ったら何を試すか。書いているあいだは、コートに立てない自分にも「できること」がある気がして、それが支えになりました。
だから僕は、ノートを「反省させる道具」にしてほしくないんです。書くことは、うまくいかない時間の中で、自分にできることを見つける手段です。三行ノートも同じで、目的は反省文の提出ではなく、「次にやることが一つ決まっている状態」で眠りにつくこと。それだけで、翌朝の体育館への足取りが変わります。
よくある質問
Q. 子どもがノートを書きたがりません。無理にでも書かせるべきですか?
A. 無理に書かせると、ノートが罰になってしまいます。僕なら、まず口頭で三行分を聞くところから始めます。「いちばん悔しかった場面どこ?」だけでもいい。話したことを親がメモしておいて、「先週こう言ってたよ」と返すだけでも、立派な振り返りになります。
Q. 親がノートの内容を見て、アドバイスを書き込んでもいいですか?
A. 僕は、ノートは子どもの領土にしておくことをおすすめします。親が添削を始めると、子どもは「正解」を書くようになり、本音の振り返りが消えます。見せてくれたら「読ませてくれてありがとう」まで。中身の評価はしない、が僕のルールです。
Q. 勝った試合の日は書かなくていいのでしょうか?
A. 勝った日こそ、おすすめです。「今日いちばん良かった場面」「その時、何を見ていたか」「次も再現するために何をするか」。同じ三行で書けます。うまくいった理由を言葉にできる子は、調子の波が小さくなっていきます。
まとめ
負けた試合は、そのままだとただの悔しい記憶です。でも、感情を受け止める時間を取ったあと、三行だけ書いてみる。場面、見ていたもの、次の一つ。それだけで、負けは翌日の練習テーマに変わります。
反省の量より、次の行動の具体さ。自分を責める夜を何度も過ごした僕が、あの頃の自分に教えてあげたいのは、この三行です。
試合後の親子の会話で使える、感情と事実を分ける聞き方は『声かけチェックリスト30』にもまとめています。公式LINEで無料でお渡ししています。
▶ 公式LINEはこちらhttps://lin.ee/DVaEz13